昭和の感覚は意識的に拭わないと...強烈に身体に沁み込んでいるのだから
給石OB会
【2018年6月記載】
大手電機メーカーに入社し、配属されたのが給湯暖房事業部であった。ここで、石油暖房機や石油給湯機の商品開発にたずさわった。しかし、当時業績は思わしくなく、事業部はほどなく統合再編されて、新たに石油機器事業部となって、再出発することになった。その際、私は研究所に異動したので、この事業部で働いたのはわずか1年あまりと、短いものであった。
当時は、朝8時の始まりで、残業も多く、深夜残業も珍しくは無かったし、休日出勤もたびたび発生していた。にもかかわらず、みんなよく飲みに行った。夜8時に仕事を終えて、それから一杯やるということも日常的であった。まさに、仕事仲間は24時間、365日生活行動を共にしていた。商品開発の最前線はそんな状態であった。だから、研究所に異動した当初は、「なんて楽な職場なんだ」という印象が強かった。
そんな入社当初の職場のメンバーが中心となって始まったのが、“給石OB会”である。私が入社した当時、社員構成としてはみんな若く、課長クラスでさえ30代半ばであった。私のひと回り上といったところがリーダークラスであった。このOB会は、そのひと回り上の世代が主体となって立ち上げたようで、今回で11回目だという。
この会のほとんどの人を私は知っている。たった一年余りではあったけれど、それはとても濃い時間だったので、とてもよく覚えているし、職場の人たちも私を良く知っているはずだ。が、私は今まで参加したことがなかった。当時の上司や同僚はみんな良い人で、私に良くしてくれたし、私も親しみを覚え、好きな人ばかりであった。けれど、そもそも定年退職をして、昔の職場のしがらみの中で集まること自体に、少し抵抗感を抱いていた。だから、積極的に参加するつもりは無かった。加えて、毎年送られてくる案内状に強い違和感を覚えていたのでなおさらだった。それは、案内状に記載されている次の内容が原因であった。
会費:6000円 但し、初参加者(男性のみ)10000円
これには閉口した。なんだこれは?
このOB会は新しく入ってくる人にハードルを設けているということなのか。それほどまでに高い位置にあるというのか。まるで、あなたが望むなら入れてやってもいいぞと言わんばかりである。いわんや男性のみがその対象で、女性にはおいでおいでをしているようで、20年も30年も、いやもっと昔の考え方であり、もう化石化しているものである。不快極まりなかった。
この反対だろう? 若い人たちには、敷居を低くしてどんどん参加してもらってこそ、活性化するというものだろう。初参加は無料、というのが私の常識であったから、強い反感を持ってしまった。こんな会なんか、行ってやるもんか。そう思ってしまった。
しかし、少し年月が経ち、歳をとると、そんな事はどうでもよくなった。ただ、ただ当時のメンバーの顔を思い出すととても懐かしく、ひと目でも会えたらと思うようになった。昔の上司から説教をもらったとしても、少しくらい偉そうにされても、どうってことはないはずだし…。
この6月、初めて参加した。当日の会場は近鉄奈良駅から徒歩で15~20分のところにある。ほとんどの人が、大和西大寺からの送迎バスを利用して会場に来るらしい。けれど、私はこのバスを利用する事をためらった。なつかしい人たちとさみだれ式に会うことに抵抗感があったし、なつかしい顔には会場でピシッと会うことの方が、区切りがあってよいと思った。それに、ひとりで会場に向かうことの方が、心が落ち着く感じがして、再会をより際立たせてくれるように思えた。
想像していた通りに、みんな歳をとっていた。外交辞令的に、「昔とちっとも変わらないね」と言ってはみるものの、面影は十分に残っているものの、やはりみんな歳をとっている(これは私自身にも言えることなのだが)。その分、とても丸くなって、柔らかくなって、昔以上にあったかい。上下の関係なんてないし、変な気遣いもいらない。そういえば昔だって特別に上下関係を意識したことは無かった。この職場では。
あの10000円表示は何だったんだ?

