組織は退化するもの...マニュアル崇拝主義はやめましょう!
マニュアル所長
【2000年6月記載】
M主担当と話をした。とても憤慨している。否、正確には、あまりのひどさにすでに切れてしまって諦めているのだ。それでも口惜しくて話さずにはいられなくて、堰を切ったように今まで受けた仕打ちの数々をぶちまけたのだろう。全くもって、100%そのとおりであった。
先日、開発プロジェクトの所長ヒアリングいわゆるTSC(theme steering committee)の場で、いつものことではあるが、研究所長は報告者であるM主担当の話もろくに聞かず、いきなり彼のプロジェクト推進にまつわるリーダーとしての資質を否定するかのような発言をしたのである。
「もういい。君の話はいつも長くて結論が分からない。プロジェクトの進め方を知らないのではないか。何をしているんだ」
たくさんの人の前で、こき下ろされたのだ。もちろん部下からの信頼は一瞬で無くなってしまっただろう。少しは技術論議をすべきなのに、いつも入り口で止まってしまう。議論をする前に一方的に否定してしまっては、みんなやる気を失ってしまう。
このところ所内では、極度に志気が低下している。大阪も奈良も...。所長の指示が一貫していない。前回言った事と全く反対の事を指示する場合が結構あるし、やたらと細かい指示を出したがる。目先のことばかりに気持ちが向いてしまうようだ。研究所運営についての全体像が分からなくなってきている。所長として何がしたいのか、何を求めているのか、全く見えてこない。私が企画になって3ヶ月が過ぎようとしているが、今の印象を一言で表現するなら、
「精々、課長レベルの人間が、出世欲にとりつかれて事業場長にまでなってしまった悲劇が起きている」のである。
研究所長自身は、自分では部下の意見に耳を傾け、責任者クラスの力を発揮させようとしているつもりなのである。先日も責任者会議の場でこういう発言をした。
「どうして誰も積極的に発言をしないのだろう。特に悪いこと、嫌なことを言うようにしないといけない。みんないつも黙っているが、これは罪悪である」
「基本は合議制である。室長の皆さんがリーダーシップを発揮し、意見を持って各会議の場では発言して欲しい。会議がスムースに進行しないのは皆さんの責任だ」
「研究所の運営は室長さんを軸に進める。何でも室長さんが責任を持って進めて欲しい」
本当にそうなのか? それにしては何もかも全てに自分の意志(おそらく意志といえる程のものではなく、上司である副社長や社長に怒られないようにするためのチェックのみであろうところのもの)を入れようとする。部下に任せていない。要は、権限は出きるだけ自分のところに集中させたい。ヤバクなったときの責任は部下である室長にとらせようという魂胆(本人は魂胆とは思っていないだろうが)が、見え隠れしているのだ。
この6月末には我が社の社長が交替する。どうやら新社長から新規事業創出に向けての研究所の果たすべき役割を強く要求されているのだろう。先日急に、所長はこんな要求をしだした。
「最近、開発テーマの進捗がおもわしくない。本年度の事業計画であげたテーマがほとんど進んでいない。進むどころか中断せざるをえないものもある。新テーマも当初の計画どおりに提案されていない。これは事業計画がきちんとまもられていないわけで、至急見直す必要がある。特に新規事業分野開拓に向けてのテーマ起案が十分なされていない。各研究室とも新たに3テーマ起案すること。10日後のTSCで新テーマの審議をする」
しかし毎年、年度末には研究所あげて新テーマの提案をしているはずだし、それに向けて1年間かけてグループ活動やアンダーテーブル活動をしているのである。第一、「室長の一番重要な役目は新しいテーマを見つけることだ」と、所長自らいつも言っていることではないか。なにも室長が怠けていたということではないはずだ。その結果が、今日の開発テーマ推進の状況であるのであって、特にどこかの研究室だけが出来ていないというわけでもない。全体が悪いのである。その原因を十分把握しないで、何も新たな対策をうたないで、単に成果を出すように要求するだけでは、トップとしての力不足は否めない。まるでどこかのプロ野球監督である。いつもサインは“ホームランを打て”“点をとって来い”これではマネージメントになっていない。たかが10日で、そう簡単にいいテーマが出るはずがない。室長連中も室長連中で、「はい、そうですか。頑張ります」では情け無い。上司も上司なら部下も部下だ。
“とにかく管理をきちんとやっていれば大丈夫だ。ものごとがうまく運ばないのは推進システムに問題があるのであって、システムをいじれば何とかなる。システムをきちんと守っていれば成果は出る”と信じている節がある。
「TSCのやり方についてきちんと決めておくこと。発表は必ずテーマリーダーがやること。発表時間は10分で終了し、説明資料はフォーマットに則って作成しておくこと。企画担当者はTSC発表マニュアルを作成せよ。私がコメントした内容は、語録として整理しておくように。マニュアルさえしっかりしていれば、R&Dはうまく推進できる。うまくいかないのは室長の責任である」
こういう類の発言がこのところ目立って多いし、室長の行動にも口をはさむようになってきた。いわんや室長の意見なんて聞けるはずがない。室長も半ば諦めて、上を向いて仕事をするしかなくなってきた。そうであるからして、上を向いて仕事をする人間が重宝される。上を向いて仕事をするから、部下のことは考えられない。室長の中には、だんだん部下を一人の人として扱えなくなってくる者もいる。ただ単に命令を聞き、こなす機械のようなものに思えて来る。最悪である。
芯のしっかりしたビジョンがあってのマニュアルである。人を尊重してのR&Dである。ビジョン無しの、人を尊重しないマニュアルなんかで、物事が進むはずがない。

