今振り返れば...よく耐えたと思う。しかし、この後も試練はまだまだ続く

王様の耳はロバの耳

【2001年4月記載】

 言いたくても言えない。自分の正しいと思う事が素直に口に出して言うことのできない環境下で、どうしたらストレスが発散できるのか。

・クーデター
 近年、組合の影響力はどんどん低下して、春闘にしても会社側の言いなりになってきたようなきらいはある。会社幹部にもそんな気持ちがあるのか、多少扱い方に傲慢なところも見え隠れしている.。今回の研究所組織変更に際しても、そんな印象は拭えない。組合は大事だから、組織の話は自ら説明しておいた方が得策だと考えたのだろう。最新の情報を教えてやるといったスタンスで、▲▲部長は奈良の組合委員長に対して、取って付けたように恩着せがましく組織変更のさわりを開示した。
 いくら力が無くなったと言っても、組合は組合。組合出身の▲▲部長は押さえなければいけない所を知っている。けれどあくまで知っているだけ。今回の開示で、もう十分とでも思っているのだろうか。チャンスはここにある。奈良の委員長Fさんは、以前私と一緒に仕事をした仲間。組合の方から会社トップを動かすことが出来るのだ。研究所幹部を飛ばすことも無理な話ではない。
 素直に現状を打ち明けた。研究所の課題を、本音のところをぶつけてみた。

・いじめ
 研究企画部の歓送迎会が、大阪であった。週末でもあり、みんな結構アルコールが入った。素面は私ただ一人、病気でアルコールは控えていると言う理由だけど、とても飲める気がしないのが本当のところ。研究所長が言った。
「○○ちゃん、元気出してよ。○○ちゃんが明るくないと研究所の雰囲気が暗くなる」
「最近とても元気ないよ。もういじめたりしないから、明るくパァーと行こう」
「来週からは変身して、もう一切怒らない、優しい人になるからね」
「もう、いじめないよ」
えっ、やっぱりいじめてたの? まぁ、他に小言を言う相手がいないのだから、仕方がないけれど…。

・呼び出し
 「新組織に向けて、キミの意見を聞きたいから大阪に来るように」と、▲▲部長より指示を受け、大阪に出向いた。
 ▲▲部長はいつもの事ながら、議論の場には顔を出さない。出てきたのは下っ端小役人のIさん、Kさん、
「研究企画部としては、次からはこの体制で行くことになった。○○さんは奈良で女性事務担当者とテーマ管理を担当することになったから。Gさんは大阪へ来てもらって、Kさんのところで電化・住設社の技術戦略を担当するメンバーに入ってもらうことになった」
「何か言いたいことはないですか」
「………」
「○○、怒った-!」「○○、怒った!」
「……これでいいんじゃあないですか。言いたいことは特にありません」
ああっ…これがSさんやKAさんが言っていた、▲▲部長の汚いやり口なんだなぁ。まともな意見交換をせず、じわじわと相手の力を削いでいく、そしていつのまにか閑職へと葬り去る。この木っ端役人の二人も馬鹿だけど、▲▲のヤツメ…。これで私の会社人生も終わりか…。深夜、駅から家への帰り道、一人小さな声で唸り続けた。
「▲▲死ね!」「今に見ていろ、ただじゃ済まないぞ!」

・従業員のために働いているか
 経営者は何を一番に考えるべきか。第一はお客様、そしてそれと同じように大切なのがそこで働く従業員。でも最近は、働く仲間の事を考える人は少なくなった。その一つの要因は、経営効率を追求するあまり、数字ばかりを追いかけ過ぎて、働く人の心のゆとりを削いでしまった。働く人へのサービスを怠ってしまったことにある。しかし、これについては会社全体の経営活動の中で冷静に見直していける可能性がある。
 本当に悪いのは、自分のことしか考えない、自分の利害関係だけで仕事をする人が、上層部に集まってしまったことだ。真に経営を考える人、働く人のことを考える人が弾き飛ばされてしまった。その結果、社内調整やトップ向けの資料づくりに費やされる時間が多くなり、本来の仕事である実験や試作品づくり、技術ディスカッションの機会が著しく減少して、ほとんどのテーマが遅々として進まない状態となってしまった。150人もの開発技術者がいるのに、新商品がほとんど出なくなってしまった。
 今開発しているテーマを知らない、もちろん新しいR&Dのテーマ企画など全く起案できない企画部長。技術者がどんな実験をしているのか全く分からず、とにかく毎日パソコンで所長からの命令を受けて部下に指示を出すのみの研究部総括。いわんやその上の研究所長なんて、何のビジョンも示すことができない。ちょっとしたイベントの挨拶や各種記事に対応する原稿まで、すべてがスタッフ頼りの所長なのだから、考える事ができないのも当然だろうが..。