社員が成長してこそ、企業は成長できる。技術は正直だ

私の仕事

【2017年5月記載】

Tさんは職場での仕事を終えて、駆けつけてくれた。南森町にある当社本社で、私と面談をさせてもらったのだ。

私が、P社の奈良事業場から、電気回路設計者が欲しいとの要請を受けてもう半年以上が過ぎている。もうこの話は無くなったと思っていたし、技術者確保が難しい案件なので、あきらめてもらうしかないと考えていた。しかし、先日も担当課長より再要請のメールが来たので、当社大阪地区にて人材供給ができないものかどうか、ダメモトで相談した。ところが、該当しそうな人がいるという。だったら会わないわけにはいかない。本当に推薦してよいものなのかどうか。この目で確かめなくてはいけない。

その人とは、現在O社で働いているTさんで、この6月末でもってO社での派遣業務が終了するという。当然、仕事中には会えないので、仕事が終わる夕方に会う約束をした。

Tさんは、31歳で、物静かではあるがきちんと自分の意見が言える好青年であった。今までは評価試験が主であり、回路設計の経験が十分であるとは言えないが、ここ一年余りは設計業務をしてきているし、モチベーションも高いので、使えるかも知れない。

これまでの経緯をよく聞くと、O社で正社員として採用される約束でこの一年は派遣業務をやってきたのだが、昨今のソーラー不況でそれが反故にされ、そればかりか派遣としての業務も無くなってしまったという。彼のためにも、今の話を前に進め、ぜひともP社で採用してもらわなくてはならない。そうでないと彼は仕事に溢れてしまう。次週、一緒にP社の面接に臨むことを約束して、その場は終わった。

思うに、今の私の仕事は、P社への技術人材の派遣、もしくは技術委託業務を請け負うといった大企業の下請けである。安い賃金で、価値の高くない仕事をさせられている。大企業の言い成りに、主体性のないルーチンワークをするだけで、面白みに欠けた将来に対する夢がほとんどない仕事だと感じていた。

実際、P社のような高い給与はもらえないし、福祉面も十分整っているわけではない。しかし、仕事の内容は、そんなにつまらないものなのだろうか。技術者として魅力のないものなのだろうか。P社の中で、彼らと一緒に働く限り、仕事の内容はP社社員とほとんど同じようなものであるし、むしろP社の社員は30代半ばからマネジメントに移行するものも多く、純粋に技術だけを追求していける社員は限られてくる。当社の社員でも、スキルが高くなればそれなりに評価してもらえるし、重要な仕事も任せてもらえる。なくてはならない人材になることができるはずである。

TさんがP社での業務に採用されれば、本人の努力次第で将来は切り開けるに違いない。私の仕事は、技術者を発掘し育成すること。当社の新入社員を、技術でメシが食っていけるレベルに成長させてくれそうな職場へ送り込むこと。すなわち、技術者が技術スキルを磨くことができ、好きな技術で生活していけるようにしてあげることにあるのではなかろうか。

私の役割は、下請け会社に天下りをして、余生をのんびりと、適当に仕事をしていれば済むといった類のものではなく、技術者に、それも若い人たちに、彼らの将来を見据えた上でのよりよい職場環境を提供することにある。

今まで採用した学生たちは、みなP社でP社の社員と同じように頑張って働いている。中途で採用した若手の社員も同じように努力している。彼らのこれから行く道をより明らかにして手助けすることが、彼らのためにもなるし、当社としての業績を上げることになる。技術者を大切にすること、それが私の仕事だ。