そこには本物と出会える機会が沢山ある...やはり東京でなくてはいけない

東京出張

【2010年6月記載】

久しぶりに富士山を見るはずだった。それもゆったりと心和やかに。今回は、シートが広い分、肉体的にも負担は少なく、リラックスできるのだから、きっと眺めは素晴らしいものに違いないと期待していたのだが。

およそひと月に一回は東京へ出張する。東京への出張はインターネット予約でチケットを買うので、おのずとポイントが貯まる。5往復もすれば貯まったポイントでグリーン車に乗ることができる。今日はそのポイントですこし早めに復路の新幹線に乗ったのだが、お日様は時々出ていてもこの梅雨空のもと、雲にすっかり覆われて、残念ながら富士山の姿を見ることはできなかった。いつもの出張は座席指定で、隣に人が座る確立の少ない3人掛けの窓側A席を取るので、富士山の見える側に座ることはない。グリーン車に乗るときにだけ2人掛けのD席を取るので、このときしか富士山を見るチャンスはない。今回、グリーン車の窓越しに見る景色はもちろんいつもとは全く違う。なにしろ海が見えないのだから。曇っているせいもあるのだろうけれど、やはり海側の景色の方が美しい。それも、建物がなければもっと美しいのだろうけれど。

京都-東京間は、片道およそ2時間20分。学生時代に比べると、とても短くなった。この程度の時間が一番使い易いし、使い勝手がある。本を読むにしても、考え事をするにしても、睡眠をとるにしても、余裕を持ってできる。とにかくゆっくりできて、頭の中が整理されるような気がする。たまに時間を持て余すこともあるけれど、この2時間という単位は、何をするにしても、ほどよい時間なのだろう。

そのほとんどが日帰りなのだけれど、東京出張はとても魅力的だ。この往復の自由な時間もさることながら、東京での会議や打合せが始まる前や終了した後の空いた時間が自由に使えるからだ。東京にはあらゆるものがある。流行の最先端のものがある。芸術は一流だし、科学技術だって高度なものが多い。月に一度、何を見て、何を体験して、何を味わって、何を学ぼうかと考えるのはとても楽しい。大抵の場合、一人だけなので、身は軽いし、気を使うことも無い。

一番多いのは、美術館巡り、山手線沿線だけでも40くらいはある。常設展に加えて、企画展もあるので、まったく飽きることは無い。何度も何度も足を運ぶうちに、自分自身の好みも「ああ、私はこんな絵が好きなんだ」などと気がついてきて、美とは何かが分かったような気になって、少しモノを見る力がついたかなと自信も湧いてくる。

次に多いのはショールーム。仕事柄、家電はもちろんキッチン・バスなどの設備商品や住まいなどを見て歩く。しかし、これは意外と面白くないし、情報としても頭の中になかなか入ってこない。あまり新鮮味がないからだろう。

時間が許せば、ジャズやミュージカルそして演芸も面白い。ミュージカルは華やかで美しく、夢の中にいるようだ。でもこれはひとりではつまらない。その点、演芸はひとりでも楽しい。落語や漫才は、話そのものはバカバカしいのだけれど、どこか芸として味わい深いものがある。実生活の中で生きている楽しさを味合わせてもらっているのだろう。このように、日常的に、生で一流プレイヤーの技が見られるのは、東京の強みだ。

スポーツ観戦も迫力があって、ワクワクする。野球は、打球音が“カキーン”と直に聞こえてくるし、応援も楽しい。大相撲だって、意外と制限時間までの間が短く感じられ、TVの画面を通してでは伝わらない一体感を覚える。

演芸やスポーツは、生で見ることによって、プレイヤーとの距離がとても短くなっているのが実感できる。TVの画面なら、クローズアップされたプレイヤーの表情や周囲の状況が詳しく把握できて分かりやすいのだけれど、ひとつの空間を共有しているといった臨場感は味わえない。この臨場感こそが大切であり、一度だけでもこの感覚を体験することは有意義であり、同じTVを見る場合でも、この体験がある場合とない場合とでは、受ける印象が変わってしまう。「百聞は一見に如かず」ではないけれど、一度本物を見たり、味わったり、触ったりすることは、それ以降の感覚量や情報量、すなわち吸収量に大きな違いがでてくるように思う。

東京出張時、折に触れ、こういった本物を体験する機会を見つけることは大切だ。ちょっと間違うと遊びで終わってしまう恐れもあるけれど、今しかこういった機会は得られないはず。歳はとってしまったけれど、まだまだ自分自身に投資しなければいけない。出張の合い間を見つけて、新しいことを体験しよう。少し後ろめたさはあるものの、そう信じてこれからも本物に接していこう。