失敗は成功の母...大切な言葉なのにね
カブトムシ
【2025年9月記載】
7月末のとても暑い頃、娘がカブトムシを持ってやってきた。家族で旅行に出かけるのでしばらく預かって欲しいと、飼育ケースと餌の昆虫ゼリーが入った大きな段ボール箱を玄関先に置いていった。その際、一日一回、餌となるゼリーを5個入れ替える作業を頼まれた。ケースの中では枯れ葉や木片と共にカブトムシのオスが2匹ほどモゾモゾと動いている。ただ、玄関先は暑すぎるのでリビングに移動させて、とりあえず快適と思われる環境の中で飼育することにした。
それからしばらくは餌の交換だけをしていたのだが、カブトムシはオスが3匹、メスが3匹いることが分かった。メスはほとんど地中にいるので、すぐには確認できなかった。
娘に返そうと思ったのだが、彼女も夏休みの行事等で留守をすることが多く、なかなか返すことができなかった。それに彼女のアパートでは、働いている昼間は室内の気温が異常に高くなると想定されたので、カブトムシにとっては環境が悪すぎる。我が家で飼うしかない…。
カブトムシについては、知っているようであまり分かってはいなかった。小学生の頃、カブトムシやクワガタムシを捕まえて遊んだ覚えはあるのだが、育てたとか飼ったという記憶はない。捕まえて遊んで、その後はどうしたのか。死なせてしまったのか、逃がしてあげたのか…。
8月も下旬になると、土がやたらと湿ってきて、べとべとし出した。どうも土の中にもぐり込めないようなので、新しいふわふわとした土と交換した。そのうちに餌もあまり食べなくなってきて、5個が4個になり、3個になった。残念ながら、8月の終わり頃にメス1匹とオス1匹が死んでしまった。さらに9月の初めにはメス2匹、オス1匹が死んだ。土と思っていたのはマットといって、広葉樹を粉砕し発酵・熟成させたもので、私の思っていた土とは全く別物であった。この時、捨てようとしたマットの中から1cm程度の幼虫が6匹出てきた。
さらに9月中旬になるとマットの表面が1割程度白く覆われて、カビが発生したのが分かった。この部分を除去し、マットを追加したのだが、この時、幼虫を2匹確認することができた。この1、2週間のうちに3、4cm程度までに成長しているではないか。この後すぐに最後の1匹が死んで、ケースの中は幼虫だけになった。
この間、娘は気を使って餌の補充やマットの追加をしてくれたので、私は何一つ考えることなく、カブトムシの世話のようなことをしていた。しかし、カブトムシが死んでしまい、幼虫が残った今、これからどういった行動をとればいいのだろうか。ネットで検索してみようか…。
でも、その必要はなかった。餌やマットの入っている袋に、成虫や幼虫の世話をする方法が図入りで分かり易く記載されている。ということは、今や、カブトムシは飼育キット(今使っているマットや餌など)を使用してプログラム(袋に記載されている手順)通りに作業を進めて育てるものとなっているようだ。あたかも私が昔よく作ったプラモデルのように…。
アナログ的なものからデジタル的なものへ。そこには知識や経験不足で、よく分からずに育たないとか死んでしまったとか、そういう失敗という概念は無い。何も考えずにマニュアル通りにやればうまくいく、ただ指示通りに動くことが要求されるだけだ。うまくいかないことがあるからこそ、成功した時は嬉しいし面白いというような体験はもうできなくなってしまったのだろうか。失敗から学び、考えるという過程はどこに行ってしまったのだろうか…。


