新しいものを生み出す時、挫折は何度もある...粘り強く続けることだ

SBC解散

【2005年3月記載】

全く予期していなかった。ここ1年、成果が出なかったと反省はしていた。しかし新規事業創出は、企業として生々発展していくために無くてはならない活動であり、成熟事業分野においては生き残りをかけた重要な取り組みであり、たとえ結果はすぐに出なくてもそのための活動は続けるべきものだと信じていた。また早々簡単に新規事業が生まれるとは考えていなかったし、トップもそう考えているものと思っていた。トップとしても一度掲げた目標をそう簡単に降ろすわけはないと、少し高をくくっていたのかもしれない。

SBC(Strategic Business Creation)が創設されたのは、ちょうど2年前のことである。そのとき私は事務局として、外資系会社のコンサルティングを受けながら、副社長を中心に新規事業創出のためには何をすべきなのかを検討した。その結果、そのためには新規事業創出を目的とした専門の組織を設け、そのための人材を集め、全社的な活動をすることが必要であるということになり、今のSBCが生まれたのであった。小手先の、そのときの思いつき程度の提案では新規事業は難しいということで、きっちりとした仕組みを作り、ロジックの通った科学的なアプローチをしようというものだった。またそのためのコンサルティングを彼の会社に依頼したのだった。

もともと本社が開発効率を上げるために、新しい手法を全社的に導入させようとしていたのに乗っかったもので、外資系会社のコンサルタントもその一環であった。費用的には3億円弱かかっていたが、当技術本部の持ち出しとしては、5000万円程度でそんなに負担とはならなかった。むしろ本社に向けて、積極的に賛同推進しているという姿勢を示すのが主な目的であったのは確かだったし、これに便乗して、私たちがやりたいことをしようとしていたというのが実情であったように思う。私はとにかく、新しいことがしたかった。世の中に新しい商品なり、新しい事業を提案したかった。SBCはまたとないチャンスを私に与えてくれるはずであり、自由に、思い切って、自分の考えを実行できる組織であったのだ。

しかしそのせっかくのチャンスをものにできないままで、終わってしまった。何ひとつ提案らしいものはできなかった。正確にはそういう活動にまで至らなかったというのが相応しいだろう。副社長は本社の活動には従ったものの、新しい提案を求めようとはしなかったのである。今の事業領域以外の提案を受け付けようとしなかったのである。今見えている新たな取り組み、とは言っても10数年前から手がけていて、まだ事業化ならないでいるネットや超音波メータといった着手済みの新規事業にのみ目が行って、これらはすでに事業部に任せるべきものであるにもかかわらず、これらに口出しをしているばかりで、新たな布石は打たないままで来てしまったのである。

結局、目先の成果にこだわり、事業化が見えているネットや超音波メータに頼っていたのであり、白物事業の将来については思考や行動がついていかなかったのである。しかも定年まであと1年あまりとなった今では、来年度の新商品に全力を尽くせというだけで、その後のことについては触れようともしなくなった。ただただ、有終の美を飾りたいだけのことなのだろう。

とは言っても、我々SBCにも問題がないわけではなかった。第一にマインドが低かった。第二にスキル不足であった。そして第三にトップとのコミュニケーションが足りなかった。どうしても新規事業を立ち上げないといけない、新規事業を創らないと私たちの生活が成り立たないといった切迫感はなかった。外資系会社のコンサルを受けながら仕事をこなしていけばいいというような安易な気持ちを抱いていた。給料を保証されたサラリーマンの持つ「まぁうまくいったらもうけもの」といった甘えがあった。したがって、いくら大金を注ぎ込んでも単なる知識レベルでのお勉強程度にしかならなかった。真の起業家に必要なスキルは身につかなかった。またSBCのメンバーと同じように副社長にも同様な甘えがあったのだろう。部下にまかせっきり、うまく行くか行かないかは部下の頑張り次第といった無責任さもあったのは確かだ。当然、コミュニケーションはなかなか取れない。成果のみを期待した報告会でお茶を濁す程度であるからして、その取り組み姿勢には当初から問題があった。それにしても、新規事業創出に向けての方法論や具体案の議論の場をもっと積極的に図るべきであった。そのハードルを越えられなかったところに、今回の結末があったと見るべきであろう。

しかし、SBCの解散というかたちで、今までの活動の総括をしたわけであるが、どうにもそのメッセージがはっきりしない。責任をとるなら、何が悪くてこれから何をしなければならないのかを明確にしなければならないのに、それが単にSBCの解散、リーダーの降格、だけでは済まされないはずだ。新規事業創出はこれからも大きな活動の柱であり、我が社が事業を続けていく限り、取り組んでいかなければならない課題なのである。したがって、もっと今までの活動をきちんと整理して、反省すべきところは反省し、今後の取り組みについての議論を重ね、より明確に活動の方向性を示すことが不可欠だと考える。今回の処置は、副社長の果たすべき責任を有耶無耶にしただけで、トカゲの尻尾を切ったにすぎない。

新規事業は絶対に要る。そういう強い意志を持って、旧SBCのメンバーとともに限られた活動範囲ではあるけれど、取り組んでいこう。今回のコンサルは知識だけの吸収には終わってはいないはずだから、「あながち私たちも捨てたもんではないぞ!」と信じて、この2年間に蓄えた力を発揮しよう。