AIも沈黙を上手く使うのかな?

程よい沈黙

【2006年9月記載】

新製品が出るたびに新しい機能が付き、その分かえって操作が難しくなっている感がする家庭電化製品であるが、少しでも操作がし易いようにとボタンの大きさ、配置や文字表現に工夫がなされるようになってきた。最近機器に搭載されるようになった音声ガイドもその工夫のひとつである。

私の所属する研究所は、この機器に搭載すべき音声に関しての研究開発を担当しており、ナレーターの選定にはじまり、喋る内容や速度、フレーズの長さなどの仕様を各商品にあわせて決めている。

そんな中で、商品仕様を決めて行く担当者とその商品の使い易さを検証する担当者が、音声ガイドを入れるタイミングに関して議論を交わしていた。

「洗濯乾燥機のボタン操作では、操作間隔が10秒経ってから音声ガイドを入れるようにした方が良いと思う。洗濯機は高機能化していて、操作が複雑になっている。だから操作ボタンを押してから次のボタンを押すまで考えることが多く、結構時間がかかるのよ。5秒程度は、通常の操作状態でもかかってしまうので、この時音声が入ってしまうと煩わしく感じる。『分かっているのに、うるさいわ』となってしまうのよね」

「炊飯器の場合は、操作がシンプルなので、ワン、ツー、スリーですんでしまう。手順を考える必要がないので、3秒も間が空くことはない。3秒経っても次の動作に移らない時は困っている場合が多いので、そのときは音声ガイドがあると便利よ」

使う機器によって音声の入り具合も異なってくる。余計なおしゃべりはありがた迷惑なのである。

なんだ、家電も人間と同じじゃないか。場面、場面で、要求される内容が変わってくる。ほんとに教えて欲しいときとそうでないときがある。いつも同じように喋ればいいってもんじゃあない。無駄なおしゃべりはかえって迷惑だ。一方的なおしゃべりは双方に良くないと言えるのではないか。お互い考える時間は必要だ。機械と人間でも適切な間合い、すなわち沈黙は必要なのだ。本当に考える会話には、つまり創造的な会話には程よい沈黙って言うものが必要なのではなかろうか。会話の中に必ず30秒程度の沈黙を入れるって言うのも、面白いかもしれない。是非会議で使ってみたいものだ。