商品の良し悪しは、それを売る人の力量によって決まる!
なぜ売れる?
【2025年6月記載】
固定電話が鳴った。一瞬、受話器を取るのをためらったが、着信表示に出ている発信元の市外局番が0742とあり、市内であることからとりあえず出ることにした。
いつもお世話になっているH電器の社長からであった。内容はヒートポンプ給湯機、エアコン、ペアガラス(二重窓)の売込みである。今なら補助金が出てとてもお得だとのこと。ヒートポンプ給湯機で10万円、エアコンで2.4万円、ペアガラスで4万円が補助金としてもらえるという。
エアコンは6台あるのでそろそろ買い替えてもよいものが有りそうだ。が、ヒートポンプ給湯機は50万円以上するし、だいたい壊れてもいない。毎日機嫌よく動いているので、急いで交換する必要はない。そんな内容の受け答えをしていると、わが家のヒートポンプ給湯機はすでに14年が経っていて、もし故障してもメーカーの交換用部品は無くなってしまう。ヒートポンプ給湯機の使用年数は10年であり、そろそろ買い替えてもいい時期だという。
とりあえず、妻が不在だったのを理由にして、2週間後にあらためて相談させて下さいと、その場は電話を切った。年金受給者としては余計な出費は避けたいし、何も無理をして買い替えなくでもいいじゃないか…。
それから数日後、郵便受けにカタログと補助金制度適用の概要が分かる資料が入っていた。再度相談するまでの間、考えるには十分過ぎるほどの時間があった。
H電器は、当初大手電機メーカーのショップ店として家電商品の販売が中心だったが、家電の市場がシュリンクしていくのに伴い家のリフォームや家電以外の商品販売も手掛けるようになった。なので、今では電機メーカーのショップ店というよりは電力会社のショップ店の活動が主となっている。わが家も洗濯機やTVなどの家電商品、エアコンや給湯機などの設備商品の購入が主だったのだが、最近では家のメンテナンスをお願いしていて、これまでにバス・トイレのリフォーム、排水溝や排水管の工事、キッチンのリフォーム、外壁塗装や屋根の重ね葺きそしてペアガラスの工事をしてもらっている。妻も私もそのすべてにおいて満足しているので、H電器に対する信頼は厚い。
家(住まい)のメンテナンスはきっちりしておいた方が良い。生活に少しでもゆとりがあるうちは、早め早めに手を打っておいた方が良い。そう考えているので、初めは乗り気ではなかったが、少し先のことを考えると話を聞いてみたくなった。今まで彼は私に損をさせるようなことはしていないのだから。
妻と一緒に、補助金などについての説明を聞いた。ところで、省エネとかカーボンニュートラルに向けて補助金が出るというのは理解しているのだけれど、この制度が始まってから随分と経つ。その成果がどの程度なのか分からないが(税金が使われているのだから、分かるようにして欲しい…)、今もって続いているのは不思議だ。ヒートポンプ給湯機もコストダウンが進み、メーカーも十分採算が取れているし、ユーザーもコストメリットを享受していると思うのだが…。
今回は、ヒートポンプ給湯機1台、エアコン1台、ペアガラス4組が対象となり、締めて補助金28.4万円を受け取ることができる。子どもたちが独立して、妻と二人になったこともあるが、今までもヒートポンプ給湯機などの導入によりわが家のエネルギーコストは著しく良化していて、これらの省エネ機器や設備による恩恵は十分に受けている。それに加えてこれだけの補助金をもらえるとは…。
H電器の社長はいつもそうなのだけれど、メインの話が終わるとプラスアルファの話が出てくる。新商品の売込みである。彼は新しい商売のネタを探しているのであろうか。よく通販とか、ネット販売で見かけるような私にとっては眉唾的な商品を紹介してくる。この前は電解水素水だったが、今回はマットレスである。トルマリンの効果により腰痛に効くそうで、一年間使って治らなければ返却も可能とのこと。すでに600台売ったという。定価は33万円だけれど25万円で購入できる。
これは凄い。何が凄いって、25万円×600台=15,000万円の売上である。これはでかい。電解水素水もそうだけれど、このマットレスもその効果のほどは科学的に説明できないし、臨床データも有るわけではない。私にとっては全く信用できるものではないし、購入する気などこれっぽっちも起らない。それでも社長はしっかりと、言葉巧みにその気にさせるように話を続ける。マットレスの使い方や治った事例等々…。
事実、このマットレスを使って腰痛が治まったり、改善されることはあるのだろう。マットレス購入に伴って、マットレスを使った運動を勧められて実施したり、就寝時の姿勢が良くなったり、自ずと腰に負担をかけないような行動をとったりするはずである。そして、信頼できる社長の言うことなのだから、きっと効果がある…と。そう思えば、それだけでよくなることはある。
考えるに、この600台は、彼の人間性から出た数値であって、マットレスの商品価値ではない。私が売っても効果は出ないだろうし、第一誰も購入なんかしてくれない。
商品の良し悪しは、それを売る人と買う人の関係性によって決まるところがある…ということか。