スマート家電から得られる情報の活用は、未だにできているとは言えない...
ログ活用の重要性
【2012年8月記載】
世の中、データマイニングがもてはやされ出してもう十年くらいにはなる。1990年代に入って取得できるデータ量が爆発的に増大し、これに伴いデータベースにおける大量データを処理するための手法としてデータマイニングの概念が現れた。その効果のひとつとしては、購買履歴を利用したバスケット解析により、"よく一緒に買われる商品" を見つけることができるといった事例があげられる。
スマート家電を商品化、事業化した目的の一つに、そこから得られるデータが新たな事業 を生み出すのではないかという期待がある。機器の情報が分かると、そこから機器の状態すなわち正常に稼働しているのか、異常の場合はどこにその要因があるのかといったことが分かる。それだけでなく、センサーやアクチュエータの情報から機器としての寿命予測までできるのではないかと考えている。さらには機器の稼働状況から人々の生活情報が得られるのも魅力的である。人々の嗜好性や生活パターンが分かると、そこからその人に合ったサービスや機器の提供が可能となる。そんな期待がスマート家電にはある。
しかし、今までビッグデータと言われているもので、それをうまく利用して大きな成果を上げたという例を私は聞いたことがない。先に上げた例のように、せいぜい特定の商品の売り上げが少し増える程度の効果でしかないのが現実である。
本当にデータを取ること、蓄えることは有意義なのだろうか。実効があるのだろうか。データの質にもよると考えられ、単に、機器のON/OFFが分かる程度では、新たな付加価値は生み出せない。どんなデータをとるのかがポイントで、いろんなデータを組み合わせることによって、新たな知見と効果を生み出さないといけない。
単純なデータが集まってビッグデータになったところで何の役にも立たない。効果の得られるデータとは何か、新たな知見が得られそうなデータとは何か。私たちが目指すところは生活者にとって便利なもの、有益な商品やサービスを提供することである。それならば、実際に生活している人々の事細かな情報が得られれば大いに役立つはずである。そう考えたから、スマート家電を広く普及させてそこから得られるお客様情報を、次の商品やサービスに活かせていきたいと、今日まで頑張ってきたのである。スマート家電から得られるデータは、ただのビッグデータではない生活情報がたくさん詰まったログデータでなければならない。
然らば、スマート家電から得られる情報にはどのようなものがあるのだろうか。家電機器の稼働状況(ON/OFF、出力など)であり、センサー情報(温度、湿度、画像)である。そこから生活者の行動パターン(在、不在、機器使用履歴)や生活環境(単身、都会)が推し測られるし、家電機器そのものの状態(定常、異常、寿命)も把握できる。
それでは、これが分かってどうなるのだろうか。私たちのくらしがどのように良くなっていくのだろうか。その生活シーンが描けなければならい。データ量が増えたときに抱いた期待とそんなには変わらなかった現実を思えば、おそらく単に取れるデータの種類が多くなっても、それだけでは何も変わらないことも十分ありうる。こうありたいと願う生活シーンをまず描き、それを実現するために必要な技術やログ情報を明らかにしていくことが求められるのではなかろうか。アウト-インの考え方をすることであり、今までのようなデータからその効果を導き出すといったイン-アウト思考では従来の枠の域を出ることはできない。
当社の新社長は、この秋より二大プロジェクトを推進すると発表されたが、そのうちのひとつが「クラウドプロジェクト」である。クラウドにつながって何が良いの? お客様情報が得られてどんな新しい商品やサービスが提供できるの? 私たちに突き付けられたミッションは重い。