27年前に比べると、今のキッチンはとても使い易く綺麗になった。調理器具が淘汰されたのだ...!

余計なものはもう売らない

【1998年12月記載】

 この不況の中、今年の賞与はその一部が現物すなわち社内製品で支給されることになった。課長職は15万円相当分を家庭電化商品の中から選ばなくてはならない。結構種類が豊富なので欲しいものが全く無いと言う訳でもない。しかも各商品とも、5,6年前に比べると数段に性能が良くなっているので、選ぶのにも戸惑うくらいである。しかし、良い商品だからといって、性能が以前に比べて良くなっていて使い勝手が良さそうだからといって、今あるモノを捨ててまで、新しいモノを買いたいという程、現在使用している商品に不便を感じているわけでもない。いわんや、狭い我が家のこと、新たに買い足してもその置き場所に困るのは明白だ。そう分かっていても仕方がない。15万円分はもらった方が得なので、無理をしてでももらうことにした。

 そこでもらったのが、食器洗い乾燥機。これは今世紀最後の白物家電のヒット商品だと思うのだが、やはりその置き場所に困ってしまった。結局炊飯器の置いてある場所に置くことにしたのだが、今度は炊飯器の行き場所がない。電子レンジの置き台をトールユニットに買い換えて、電子レンジの下の位置に炊飯器の場所を確保することになった。がしかし、今度はこのトールユニットに電子レンジが入らない。もう5,6年も前の機種なので、横幅が広すぎるのだ。新しいコンパクトタイプのものにしなくてはならなくなった…。全くひどい話であるし、ぶざまな話だ。かように、今の家の中に新たなモノを入れるのは、ほとんど困難に近い状態になってきている。加えてこの不況である。もうモノは要らない。本当に必要なモノしか買えない状態にあるし、むしろ不必要なモノがあったら困るのである。

 メーカとしては真剣にこういう状況を考えなければならないし、単に商品の性能を良くしていってもモノは売れない。第一、もうほとんどの場合、マスは決まっているのである。商品市場の多くは、今あるものの買い替え需要であり、その限られたマスの中で、各社が性能や価格の優劣でせめぎあっているのであって、決して市場そのものが伸びることはない。仮に全くの新しい商品が生まれたとしても、それが生活必需品となりうるような画期的なものでない限り、それに割けるスペースやエネルギーは限られているので、市場に受け入れられるのは難しいと言わざるを得ない。もちろんメーカとしてはそういった生活必需品たるものを生み出すことや、今ある商品に地道な改良を重ねていくことは、人々の生活に役立ち、メーカとして自らの存在価値を問い続けるためにも必要なことではある。しかし、世の中の大きな流れに適合し、その存在価値を高めていくためには、ただ単にメーカだからモノを造ればそれで良いというものではないだろう。ある意味では、限りある物質やエネルギーを消費していくメーカの存在は、将来的に、地球そして人間にとってマイナス因子として罪悪的な位置付けになることもあり得る。もはやどんどんモノを造って、どんどん買ってもらい、古くなったら捨てて、また新しいモノを買ってもらうといった、物質やエネルギーの過大な消費は許されない状態になった。メーカとしてどうその存在価値を示していくか、将来にわたるメーカとしてのビジョンを明確に、いち早く示すことの出来る会社が生き残れるのであり、成長し続ける会社となりうるのであろう。

 もうモノは要らないし、もうモノは売らない。そう考えた時メーカとして何を為すべきなのか。我が社として何を目的に企業活動をしていけば良いのだろうか。