20年前に感じたことは本当だった。今まさにベースボールの時代になっている。新庄は日本球界の宝だ!
SHINJO
【2004年3月記載】
プロ野球が開幕した。一度は開幕戦を見てみたいと思っていたが、あいにく子どもたちは予定が入っていて、一緒には行けそうもなかった。そこで開幕戦とはいかないが、開幕第2戦に次男を連れて行くことにした。対戦カードは大阪近鉄VS北海道日本ハム。最近のパシフィックリーグは、私が学生だった頃とは違って、随分と話題に富んだ試合が多くなってきた。選手は所謂現代的で、カッコイイ若い人が多く、昔のような泥臭く職人的な雰囲気が薄れてきたので、一種のショーを見に行くといった感じで、とてもワクワクする。
その証拠に、最近は結構観客も多く、この日も23000人の入場者があった。ただ近鉄も日本ハムもスター選手といえるのは、中村、岩隈そして大リーグ帰りの新庄くらいのもので、他のパシフィックリーグ、特に福岡ダイエーのようにはたくさんいないので、やはり駒不足は否めない。まぁ、それでも次男と一緒なので、飲んだり、食べたりしながら十分に野球を楽しむことはできそうだった。私も次男も近鉄ファンという訳ではなかったが、席が一塁側の内野指定だったので、自ずと近鉄サイドの応援ということになる。近鉄のロゴ入りメガホンを買い求めて、俄か近鉄ファンとなった。大阪ドームは明るくて空調も良く効いていて、座席も比較的ゆったりとしているので、ショーを楽しむのには適している。暑くて狭い甲子園とは随分と違う。
近鉄の先発ピッチャー、バーンが打たれながらも要所を締めて、2回に許した2点だけに抑え、打線も徐々に追い上げ、2-2の同点で9回の最終回を迎えた。9回表の攻撃で2アウト2塁1塁から、今まで凡退していた新庄が帰国初の大ホームランを放ち、3点差をつけた。この時、誰もが新庄のスター性に魅了され、日本ハムの勝利を信じて疑わなかった。球場全体がそんな空気に包まれるのがよく分かった。私も内心「やったー!このまま終われば明日のスポーツ紙の一面は『新庄、帰国第一弾、鮮やかな大ホームラン』となるに間違いない。そして新庄のヒーローインタビューも聞くことができるし、なによりも家に帰ったら自慢できるぞ」と大いに喜んだ。
しかし9回の裏、近鉄が猛反撃に出た。一度はあきらめかけていた近鉄ファンも、この土壇場で粘る選手たちに大声援を送った。そして近鉄の看板打者中村が、左中間を破るヒットを放ち逆転サヨナラ勝ちおさめると、球場内はドラマチックな幕切れにどよめきが走った。観客はみな一様に興奮していた。
思い切って野球を観に来て良かった。面白かった。私たち親子は共に満足して家路についた。「またパ・リーグの試合を観に来てもいいな」と思いながら。もちろんこのような試合展開の面白さが一番印象に残ったのだが、それだけでは、また観に来ようとは思わない。こんなドラマがいつでも観られるわけではないのだから、そんな淡い期待だけでお金を払う気にはなれない。私がそう思えたのは、野球そのものが面白かったからである。すなわち、新庄のプレーに感動したからに他ならない。新庄のホームランは確かに凄かった。しかしそれよりも、彼のプレーに躍動感を覚え、一種の美しさや楽しさを感じたからである。センターからホームへの返球は糸を引き、キャッチャーミットにストライク。攻守交代時にはベンチから飛び出し、センターの守備位置まで颯爽と走る。まるでカモシカが飛び跳ねているようだ。やはり大リーグ帰りは違う。完全に観衆を意識したパフォーマンスだ。ライトの守備位置につく坪井が、のそのそと歩いて行く姿とはかなり対照的だ。
野球は勝ち負けが一番、勝ってなんぼの世界。といった一昔前の考え方とは違い、お客様第一、どうしたら観客が喜ぶかを考えて野球をする。まさにベースボールの世界になってきたようだ。SHINJOはそんな世界を私たちに見せようとしている。