自由になる時間がどれだけあるか、それが豊かさの指標?
豊かなくらし
【2008年3月記載】
ここ2、3年で急に取り沙汰されている問題として、日本は格差社会になっているということがあげられる。お金持ちはどんどんその資産を増やして裕福になっていく。その一方で、貧しい人はますます貧しくなって、働いても、働いても一向に収入が増えない。ワーキングプアという言葉まで出現してきた。企業はコストを抑えるために正社員を減らし、賃金の安いフリーター等の非正規雇用社員を使うようになってきた。それも若年層を中心に。世間一般で知名度の高い企業に正社員として就職するのは至難のこととなった。
この二極化してきた社会構造の中で、富の分配が偏りつつある今のくらしの中で、貧しい人たちは、おそらくはその大半が「豊かな」生活とはいえない状況下にある。中にはそれでも倹しい生活の中に、その人なりの豊かさを満喫して生きている人もいるだろう。しかし、やはり多くの人たちは苦しい生活を強いられていると考えられる。ではその対極にある金銭的に恵まれた人たちは、豊かな生活を謳歌しているのだろうか。確かに経済的なゆとりはあるので、衣類でも、装飾品でもブランド品を持つことはできるし、高級車にも乗れる。住まいも、交通に便利なところもしくは郊外の閑静な場所にでも構えることができる。金銭的なアドバンテージはくらしの選択肢を増やしてくれるし、物質的な面でも、文化的な面でも優越感を抱かせてはくれる。しかし、だから、豊かだと言い切ることができるのだろうか。
たとえば、金銭的なアドバンテージを確保するために、夫婦で働かなくてはならないとか、競争社会で勝ち抜くために昼夜を問わず、体調の悪い時でも働き続けなければならないとか、会社での業績を上げるために滅私奉公でひたすら上司の指示を忠実にこなしていく、等々、相当の犠牲を払っていることもあるように思える。こんな状態で、果たして豊かな生活と言えるのだろうか。ぎすぎすした日々のくらしの中に本当の豊かさなどあるわけがない。
今、日本の平均的な家族像は、従来言われてきた夫婦と子ども2人の4人家族ではなく、年老いた夫婦のみ、もしくは独居老人。あるいは年老いた片親と成人した子どもの2人、未婚の単身者など、1人から2人の世帯が標準的な家族と考えられるようになりつつある。
比較的、金銭的に恵まれている現在の老人でさえ、精神的、肉体的な面での不安感はあるに違いないし、現在の生活には困っていない未婚の30代、40代の世代も将来に不安を抱えている。豊かさとは一体何なのか。日常生活の中での関心事では、趣味・レジャー、健康、家族・友人、生活費などが上位に来る。※1
これらのことがほぼすべて満足できる状況にあれば「幸せ」となり「豊かなくらし」を送っているということができると考えてもよいだろう。それではそのためには何をどうすればよいのだろうか。まず健康を保つことこれには①肉体的な健康と②精神的な健康がある。次に③経済的な余裕があること、④家族や友人とのコミュニケーションが十分にとれていること。そして⑤自由に使えることのできる時間が確保できていること。この5つの点での満足度を測れば、豊かさが一体どの程度なのかが分かるのではないだろうか。
①肉体的な健康レベル・・・罹っている病気の有無、健康診断での要管理項目数
②精神的な健康レベル・・・精神的な病気に罹っているか、もしくは以前に罹ったことがあるか、ストレスをどの程度かかえ負担と感じているか
③経済的な余裕レベル・・・必要と考える収入に対する今の収入の比率、貯蓄額、負債額
④家族や友人とのコミュニケーションレベル・・・家族や友人と一緒にいる時間(同じ空間or異なる空間)、会話の有無
⑤自由になる時間レベル・・・家庭内での滞在時間-睡眠時間、趣味・レジャーに割ける時間
これらを定量的に測ることによって、私たちの豊かさのレベルというものが、ある程度見えてくるのではなかろうか。そこには金持ちも貧乏人も無いはずなのだが。
※1 住宅の情報化に関するユーザ実態・ニーズ調査2007年1月 住宅情報化推進協議会