科学技術の最先端が分かる東大のキャンパス公開はとても有難い...今年はもう終了したけれど

生研公開

【2004年6月記載】

タイミング的にはこれ以上ないものだった。東京大学生産技術研究所の研究内容の一般公開が2日間にわたって実施された。折りしも私たちのグループでは、新規事業テーマを見つけ出すための新しいアプローチを始めたばかりで、そのためには最先端の技術動向を把握することは必要不可欠であった。

現在、日本の研究最先端は何といっても大学の研究である。やはり経営という課題を抱える企業では限界がある。一方、産業技術総合研究所などの公的機関は、大学と企業を結ぶ技術の橋渡し的な役割を目的としているので、これら公的機関と連携して新しい技術を取り入れるのは、最も効率的な方法であると思われる。それも良い。が、しかし何といっても、この東大生研公開は、私たちの目的とするところの実用的先端技術が、豊富にしかもオープンに濃縮して見ることができるので、とても都合が良かった。

公開される120の研究テーマを1日では消化しきれないことは分かっていたので、2日間の公開期間をフルに使って、とにかく関係のありそうな研究の内容を把握することに主眼を置いた。インターネットの情報を元に、パートナーのIさんと事前にテーマ内容を分析し、効率的に見て回ろうとしたのだが、やはり目的としていたテーマ全部を見ることはできなかった。30数テーマ見るのがやっとだった。しかし、最先端技術の動向を知るという所期の目的はほぼ達成できたので、それでも十分だった。そして忘れかけていた研究することの素晴らしさを改めて実感することもできた。

インターネットや論文等で知ることのできる内容以上に得るものは大きかった。第一に、実際に実験したり計算したりしている場所で、現物を見ながら、自分の分からないところや疑問点を聞くことができる。したがって理解できるのが早く、頭の中に残る。次に、過去数年間の研究内容も同時に展示してあるので、過去の経緯を含めてその研究の原点が分かるし、より広い範囲で研究内容がつかめる。3つめには、研究者の考え方やこれからの取り組み方向が分かる。何を目的に研究しているのか、これから何をやろうとしているのか、彼らの意気込みが伝わってくる。そして何よりも学生から院生そして職員に至るまで、みんなとても親切に丁寧に教えてくれる。

日本で一番優秀な人材が集まる所で、しかも一番お金をかけている所で、研究している内容を教えてくれる。本当に有難い。年に一度、こういった場を設定している東京大学は本当に素晴らしい大学である。自分たちの使命を考え、それを果たすべく、一種の義務としてやっているのだろうが、もっと企業はこういった機会をうまく利用しなければいけない。大学は開かれていこうとしているのに、私たち企業はそれを利用しようとはしていない。
「どうせたいした研究はしていないよ。こんな情報は、ネットを使えばいつでも見れるさ」
「どっちみち実用化にはほど遠いさ。我々が考えているのが民生では最先端だよ」
ある意味で、私たちはお山の大将化しているのではなかろうか。