業務遂行に対する考えが甘かった...けど、これで良いと思う

足りないもの

【2006年1月記載】

結構、自分では良くやっていると思っているし、人間的にもバランスがとれていると考えているので、あまり自分自身を振り返ってみることはしなかった。ましてや自分の欠点を洗い出してみるなどということは、今までしたことがない。でも、少し考えたほうが良い。私の目標としていることと現実にギャップがあるのは明らかであり、そこに私自身の能力に足りないところがあるのは否定できないからだ。したがって、一度私自身の足りないところについて考えてみることにした。

その一番良い題材が、昨年オープンに漕ぎ着けたEco&UDハウスの設立までの私のスタンスであったのではなかろうか。Eco&UDハウスは、そもそもEcoハウスとして企画されたもので、エコロジー&エコノミーを主体とする当社の現行商品を搭載したモデルハウスをイメージしていた。しかし設計図面が出来上がって行く途中段階から、本来の推進委員長である専務を飛び越して、副社長より「UDの視点を入れろ」との指示が入り、急遽UDワーキングを立ち上げることとなった。研究所も実体はともかくUDを標榜していたので、このワーキングに参加せざるを得なくなり、結局私が主査としてこのワーキングを推進することになった。しかも最終的には「UDをメインに訴求したモデルハウスにせよ」ということになり、Eco&UDハウスは私の両肩に重くのしかかることになったのである。

ここで私の特長、すなわち欠点が出た。普通の人とは違った思考と行動をすることに生き甲斐を見出すタイプで、言われたことや指示には素直に従わない。むしろ言われたとおりにするだけではアホらしいと思っている。こんな人間が、すでに路線がしかれている企画の中で、あまり創造的ではないと考えているUDに関する仕事を熱心にするわけがない。おのずといい加減になって単に仕事をこなすだけになる。むしろ東京出張が増えて、いろいろなところに遊びに行ける。様々な人に会える、といった遊びの方向に気持ちは引っ張られることになる。「まぁ適当にやっとけばいいや」ってな気持ちで仕事をしていることになる。いい仕事ができるわけがない。

Eco&UDハウスは、大袈裟に言うと、当社のUDに対する考え方を世の中に問いかける代物である。途中から変わったコンセプトであるといってもUDはメインである。トップもそれなりの要求はしてくる。

オープンを十日後に控えた副社長の事前チェックでは、事細かに指示が下りた。それは徹底的にUDを表現しようとするもので、壁の出隅が角ばっていてはいけない、手摺りは可能な限り付ける、階段は長すぎるのでL字型にせよ、テーブル角のアールが小さい、数え上げればきりがない。しかも、そこには何も新しいUDの視点はない。十分施工現場で対応できるだろう。それより、その日は高校時代の友達と飲む約束をしていたので、そちらが優先だ。私は仕事の段取りもそこそこにして帰路に着いた。

でも、できる奴はここが違う。おそらく何もやることが無くても夜遅く最後まで残るだろう。上司の指示をとことん関係者に伝えて回るだろう。仕事は大切なのだから。

また、オープンの数日前、最終確認を事務局とする中で、一足早く失礼することがあった。父が上京してきたのである。予てより一緒に食事しようと約束していたので、予定の時刻よりは随分と遅く出たのではあるが、一抹の後ろめたさは残った。やはり仕事よりも私生活を優先したのである。

さらにはオープン当日。主役は社長はじめ経営幹部たちである。私は経営幹部のアテンダントということではあったが、ことさらアテンドする必要もなく、所在無くぶらぶらするばかりであった。すでに役目は終えていたのである。オープニングセレモニーはとても立派で、報道関係者だけで200人以上もの人が訪れた。ここ1ヶ月にわたる、度重なる東京出張での疲れもあり、私は早く帰宅したかった。何もこれといった用事がないのに、ただ時間が過ぎるのを待つのは苦痛であった。夕方になり、展示説明員たちが帰路に着くのを機に、私も思い切って帰ることにした。

「えいっ、まぁいいや。経営幹部はまだ居るけれど、どうせ何もしないのだから彼らと一緒に帰ってしまおう」

と言う訳だ。こういう時には得てしてこうなるもので、危惧していたとおり、新幹線に乗った途端に事務局から携帯に電話が入った。

「今どこにいるの?」

仕事に対するひたむきさというものがないのか。常に心のどこかで、「楽してやろう」、「できるだけ無理はしないように」、「仕事はほどほどにしておけばそれでいいじゃないか」といった言葉が過ぎっている。それだけでなく「もっと楽しいことはないのか」、「今までに体験してないことをやってみたい」などと遊ぶことがいつも頭の中に浮かんでくる。およそ仕事人間じゃあない。仕事はいつも二の次になる。これでは上司の信頼も厚くはならない。会社では成功しない部類だろう。

本当に自分の能力に自信があるのであれば、ここいらで一発、面白い仕事を考え、立ち上げることだ。そうでなければ、平々凡々と静かに不平を言わず残りの会社人生を全うすることだ。ちょっとした楽しみを味わいながら。それが私なのだ。