時間に追われることのない休日出勤は、実に快適だと思う

不思議な少年

【2017年5月記載】

とても過ごしやすい季節となった。ゴールデンウィークは、この気持ちのよい気候の中で、心がウキウキして、1年の中で最も楽しみな長期休暇の取れる一週間である。お盆やお正月のような行事的なものもなく、自由な時間を持つことができて、心底ゆったりできるので本当に有難い。

定年退職をすると、この時期はより自由で長いスパンでの行動計画を練ることができると踏んでいたのだが、再就職をしてしまうとそうもできない。むしろ現役の頃より(と言っても今でも現役なのだが)も休日は確実に減っている。中小企業は、暦どおりの勤務日が設定されていて、親会社のような大企業みたいに、長期休暇が取れるような設定にはなっていない。だから今年のGWは、親会社は4月29日から5月7日までの9連休なのだけれど、我社は中日の5月1日、2日は出勤日となっている。

10年も前だと、絶対に休みたいと思っていたけれど、今では子ども達も自立し、田舎に帰省する必要もないので、特別に休まなければならないということもない。むしろ適当に働いていた方が、生活のリズムが狂わなくていい。

この5月1日、2日は親会社が操業していないこともあって、我が社の技術社員はみな休暇をもらっている。親会社が休業状態なので、下請け会社である私たちに仕事が入ってくることはない。働くとしても、今までにやり残している業務を遂行することが主になる。

まず手をつけたのが、今まで溜まりに溜まっている電子メールを片付けること。きちんと目を通していないメールが365通もあった。しかし、これも親会社が休みで、我社もほとんど稼動していない状況なので、ゆっくりとひとつずつ処理できる。課題の案件は打つ手をじっくり考えられるし、先を見越して布石が打てる。やり残していた業務も、周囲の状況が整理できているので、無駄なく効率的にできる。なにせ、親会社も我社も止まったままなのだから、焦る必要はないし、行動できているのは私だけなので、好き勝手にできる。そう、この2日間に関しては、私の周りで仕事をしている人たちは、みな止まったままなのである。

「時間よー、止まれ!」

私が幼い頃、少年雑誌に「不思議な少年」という漫画があった。サブタンが「時間よー、止まれ!」と叫ぶと、まわりの人やモノがすべて止まった状態になり、その中でサブタンが自由自在に動き回り、事件を無事に解決するという物語であった。

GWに働いている今の私は、そんな状況にあるのではないかと、ふと思った。そう考えると、休日出勤して働いていた同僚、先輩、上司たちは、みなこんな気持ち、状態にあったのではないのかと想像してしまう。みんなが休んでいる時に働くということは、まじめであるからとか、仕事熱心だからだとか、責任感が強いからとか、何もそういうことではなくて、もちろんそういう面はあるにしても、そんな事よりももっとそこにある大きな意味は、自分にアドバンテージを持たせることにあったのではないのか。すなわち、時間を止めているのである。他の人たちの時間を。その間に、自分のやりたい事を、しなくてはならない事をやっつけてしまう。まさに、不思議な少年サブタンになっていたのである。

こんなに楽なことはない。時間の止まっている人たちと仕事をしているのである。この間は自分のひとり勝ちである。自由にできる、したい事をしたい放題である。せっかくの休日を仕事以外のことに使えない不自由さはある。家族サービスもできない、自分の趣味もできない、体力的にも辛いものがあるだろう。けれど、それを補って余りあるほどの効用や効果があるのだろう。休日出勤をする人たちにとっては。

休日出勤をしなければならない人たちの置かれている状況は決して良いとはいえない。けれど、それをするだけの意味はあったのだ。それを体感できた2日間であった。