数値化できないモノにこそ本当の価値がある
デジタルとアナログ
【2019年3月記載】
デジタル化によって様々な商品の性能が向上し、とても便利になってきた。レコードやテープがCDやレーザーディスクになって、また、フィルムがDVDに変わって、音声や映像の質が良くなるとともに、コピーもし易く保存も簡単になり、とても扱い易い機器となった。
テレビはブラウン管から液晶になり、アナログ放送からデジタル放送になった。今ではハイビジョンから4K、8Kになろうとしている。
このように、技術の進化はアナログからデジタルへという表現に集約されるようになった。この代表的なものが、映像音響機器であり、家電業界ではクロモノといわれる商品分野である。このデジタル化の波に乗り遅れ、格差が生じる事をデジタルデバイドと呼んだり、デジタル化についていけない人々をアナログ人間だ、などと揶揄したりしている。デジタルって凄いんだと思ってきた。
クロモノはデジタル化が進んで、いち早く商品の質が向上した。それも高性能で高品質のものへと進化し、この情報社会の進展に大きな貢献をしてきた。我が社では、このトレンドに乗って、特にAVC分野では積極的にデジタル技術を取り入れてきた。デジタル化が進まないシロモノを担当する私たちは、アナログ技術者だと半ばバカにされてきたようにも思う。然るにその結果、どうなったと言うのか。クロモノはコモディティ化してしまい、韓国や中国にその市場を奪われてしまった。今では、サムソンやLGの商品の方が優れていると言っても過言ではない。
デジタルとは、0と1で表現されるものであり、ON/OFF信号で扱われる、要するにコンピュータの世界である。これに対して、0と1を使わず連続的な変化をあらわすことをアナログという。コンピュータが出現する以前の物理量の表現方法である。アナログの世界では、マクロ的には再現が可能だけれど、細部にわたっての再現には難しさがある。コピーの精度が悪い。これがデジタルだと、0か1の世界だから、再現性は確保される。何度コピーしても、誰がやっても、結果は同じになり品質は保たれる。デジタル化の技術は凄い。
オリジナルのものが精緻であればあるほど、より高品質のものが再現性よく、手に入ることとなる。今の高度情報社会では、データの扱いが大量に簡単にできるようになり、私たちのくらしに、デジタル化の効果と影響は計り知れないくらいに大きくなっている。
データを入手しやすいものでは、それも比較的容易に大量の多岐にわたるデータが手に入れば、それらを処理し、商品やサービスとして提供できる。映像や音声は、より高精度で高品質なものになっている。そしてそれらは、誰にでもできる技術であり、映像や音響機器の商品優位性というものは扱うデータ量の大きさだけで語られるようになった。
しかし、一方で、デジタルの世界には人間の思考が入り込む余地はないように思える。人間のもつ感性、曖昧とも受け取られる非理性的なものを受け入れることは、今の段階では難しい。人の直観力や嗜好は数値化できないのだから。その点、アナログ技術はとても人間的だと思う。その人が生まれ持っている個性と培ってきた経験によって導き出した答えをそのまま使っているのだから。いくらマイコンを搭載しようが、洗濯や調理は人の経験や嗜好を重視しなくてはいけないし、設定条件も生活環境や好みにより多様であり、今の技術レベルではデータ量が莫大なものになるのでとても処理できるものでない。
デジタル技術を使うと、良い品質のものを大量に生産できる。でも、それは限られた範囲での話だ。デジタル化できないものにこそ、これからも新たな価値の創出があるのではないだろうか。まだ、依然としてデジタル化できない分野はある。情報量の集積だけでは捉えきれないほどに、アナログの世界は広くて深い。一人ひとりの知恵と経験が活きるアナログ=シロモノの世界はこれからも新しい開発が続くと思っている。

