家事の中では調理が一番ハードルが高い! これの克服が達成感を醸成する
ナスの煮びたし
【2022年7月記載】
思っている以上に、家事をするには時間がかかる。そして頭を使う。私一人だったら、学生時代のようにのんびりと適当に手を抜いて、何もせずにグダグダ過ごすのだろうけれど、妻の留守の間は私がハウスキーピングをしなくてはならず、しかも次男がいるので彼の世話もしなくてはいけない。まるで毎日仕事に行く夫(次男)を送り出し、家事全般を仕切っている主婦のような立場だ。
妻が隔週で三次へ帰省することになって、私の家事における役割分担は大きくなり、妻が留守の時は私が家事のすべてをしなければならないことになる。しかし、当面は家事初心者の私にすべてを任せることはできないので、事前に料理の作り置き、食材や冷凍食品の買いそろえ、衣替えの準備、庭の手入れ、キッチンまわりの整理、トイレやバスのきめ細かい掃除、ごみの分別などはしてくれている。なので、それほど負担にはならない。が、それでも一週間の家事は、私にとって大変な作業である。妻の場合は、これに帰省先の三次の家事もあるので、私の負担どころではないのだが…。
最初のうちは、妻の作り置きの料理と冷凍食品、場合によっては近くの生協ストアで総菜を買ってきて間に合わせていたのだが、これではいつまでたっても独り立ちはできないし、妻の負担は軽くならない。ましてや私はリタイアした身で何の負荷も無いのだから、少しは日常生活への貢献をしなくてはいけない。
まずはハードルの一番高い料理を自力でできるようにしなくては話にならない。そう考えていた時、折しも妻が帰省して私が家事を預かっているその時、Tさん夫妻が採れたての野菜を持ってきてくれた。いつもならそれらは妻の手で食卓に上るのだが、今は不在でそれは叶わない。トウモロコシ2本、大きめのピーマン4個、小さめのカボチャ2個そしてナス5本を頂いた。Tさん夫妻には妻不在の話をしたのだが、その時おもわず「頑張って、頂いた野菜を料理してみます」と言ってしまった。
先日買い求めた料理本をベースに、インターネットで料理方法を検索してみると思いのほかできそうな気がしてきた。特に動画サイトでは実際にやっているイメージがつかめるので、グッとハードルが低くなる。また、何が食べたいといったような欲求はないから料理内容には拘らない。できるだけ単純なものを選択すればいいので、俄然やる気が出てきた。
まずは一番速く鮮度が落ちそうなナスを片付けようと考えて、前回の帰省時に妻が用意してくれていて美味しかった“ナスの煮びたし”を調べてみた。準備するものはナスだけでいいし、調味料や道具も特に変わったものは使用しない。
「よし、これや!」
料理をするイメージを自分の中で作り、レシピを確認し、材料や道具を準備するのに2~3時間かかった。だから実際の作業は翌日となった。
どうしても実際のボリューム感、味付け感や加熱具合がつかみにくい。それでも何となくできてくるので気合が入る。かかった時間は2時間くらい。普通なら30分もかからないらしいけれど、出来上がると嬉しい。
ひとりでできたと思うと充実感や達成感が湧いてくる。が、味見してみると愕然としてしまった。完全に失敗だ。とにかく味が濃いのである。普段妻の味付けに慣れているので、このレシピでは口に合わない。初めての料理が失敗してしまった。純子に電話で聞いてみると、調味料の量はレシピの半分程度にしないとダメだという。ただし、今からでも修正はできるという。お湯を足して薄くすればいいらしい…。
味付けも調整できて、なんとか完成した。夕食時次男に食べてもらい、どうかと問うと、
「お母さんのと遜色はない。おいしい」ということであった。
一歩前進である。