テレビゲームを持っていなかった彼はその後どうなったのか

ファミコン

【1998年1月記載】

当世、ファミコンが流行だして10年以上になる。「ファミコンは百害あって一利無し」そう思ってきた。確かにテレビゲームはとても面白くて楽しいし、ちょっとした気晴らしにもなる。一度やりだしたらついつい夢中になって、時間が経つのも忘れてしまう。だからこそ気をつけないといけない。テレビゲームに熱中するあまり、大切なものを失ってしまうのが落ちだ。特に時間。ゲームに熱中すると1時間や2時間はゆうに遊んでしまうし、病み付きになればそれこそ時間のロスは莫大なものになってしまう。

特に幼い子供たちにとっては貴重な成長期において、時間の無駄使いもさる事ながら、心身の発達に欠くことの出来ない友達同士のふれあいの機会が失われることになりかねない。運動場や公園でボール遊びや追いかけっこ等の全身を使う遊びで培われる運動能力や社会適応力といったものが、阻害されはしないかという不安を抱いてしまう。子どもたちにはテレビゲームに熱中するあまり、人と人とのふれあいの少ない、肉体的にも精神的にもバランスを欠くような人間には育って欲しくない。

この前の日曜日の夜、10歳になる長男と最近興味を覚えてきたらしい将棋を指していたのだが、私があまりにも一方的にコテンパンにやっつけてやったせいなのか、悔しさと惨めさが相まったのか、彼が急に涙をポロポロと零しはじめた。一度は泣き止んだのだが、そのまま寝床についた際、今まで幾度となく惨めな思いをしてきた事が、思い起こされたのか、妻に訴えるようにして、再び泣き出してしまった。

「おいらだけだ、テレビゲームを持ってないのは。だからこの前も友達の家に遊びに行った時、『おまえは下手くそだから、テレビゲームなんかするなよ』と言われて、させてもらえなかったんだ」

そう言えばテレビゲームが無いのは我が家だけかも知れない。道理で友達があまり我が家に遊びに来ないはずだ。来たとしても、いつも遊ぶ時は決まって外で遊んでいる。なかなか元気良く遊んでいて良いことだと、単純に考えていたのだが、実際は少し違っていたらしい。大人の価値観で、過去の自分の経験だけで、テレビゲームは時間の浪費で、創造性を阻害するもので、目にも良くない。それより将棋を指す方が、思考力や論理力を伸ばすし、レゴブロックで遊ぶ方が、創造力を養うから絶対に良いはずだと思い込んでいた。本当に何が子どもにとって良いのかは別にして、そういった固定観念で、自分の価値観を子どもに押し付けることによって、知らないうちに子どもたちのコミュニケーションを阻害していたらしい。この際、テレビゲームを買ってやることにした。

早速、彼は学校に行って買ってもらえることを話したらしい。「良かったなぁ、○○パー」って、みんなが喜んでくれたらしい。

今は一日10分間だけ、テレビゲームで遊ぶことに決めて遊んでいる。