スキルアップは学校を卒業してからが大切。企業にその力が無くなった今、どうする?

転職せざるを得ない時代

【2023年4月記載】

私の感覚だと、社会人になり仕事をするということは、学校を卒業したらすぐに定職に就きそこで与えられた業務をきちんとこなし、定年までひたすら勤めあげることを意味していた。だから、会社勤めなら一生同じ会社で仕事をするのであって、途中で辞めて他の会社に替わるとか、仕事をしないでブラブラするなんてことは考えられなかった。

転職は自分にとって決して有利にはならない。同じ会社にいる方が、業務内容や人脈も濃く深くなるので、出世や賃金上昇の面でも得になると考えていた。また、退職金の面でも、できるだけ長く勤めた方が良かった。一流企業に勤めた人ならば余計に。

しかし、どうだろう。今の時代、同じ会社に学校卒業時から定年まで勤める人なんて、ごく少数になってしまったのではなかろうか。息子の例もあるが、彼らの世代では転職をしない方が稀なようである。企業の大小にかかわらず、自分に合った仕事を探して転職する。たとえ一流企業に勤めていたとしても、公務員といった安定した職種であっても…。

私の若い頃に思っていたのは、今は決して満足できない状況であったとしても、将来は必ず良くなる。待遇にしても、仕事内容にしても。賃金は常に右肩上がりで、10年で倍になっていた。仕事も常に新しい事にチャレンジできたし、新しいトレンドや技術がそこにはあった。だから同じ会社にいても、いつも変化していたし、スキルアップも可能だったので、自分の目標や夢が実現できるという思いが持てた。

しかし、今はどうだろう。21世紀に入ってからというもの、日本の経済は停滞したままだし、新しいトレンドや商品技術は生み出されていないので、将来に対する希望は持てていない。明るい未来が待っているという感覚は全くない。そして、それと同じように個人の生活も以前のような上向き状態ではなく、若い人たちに夢を持たせられるような状況にはなっていない。これでは同じところで一所懸命に働きなさい(一か所で)というのが無理である。自分の活路を見つけるために動き回ること、すなわち転職も意味のある事のように思える。ましてや日本の企業の力が目に見えて衰えてきている今となっては、同じ会社に長く勤めるということがナンセンスになっている。

加えて、政府は年金問題もあってか、70才まで働けという。私たちの世代だと大卒で定年(60才)まで働くとすると38年間であった。それが今では10年延びて48年間働くということになる。これでは人生のほとんどが労働で消耗しきってしまい、人生に対する夢が持てなくなってしまう。

一方で、会社というものはどうなっているのか。日本の企業の成長性はほとんど止まったままであり、依然として会社の寿命というものは25年程度と言われている。成長しない会社で、しかもその寿命が個人の労働年数の半分程度であるのだから、昔のように会社に自分の人生を預けて会社とともに成長していくなんてことは考えづらい。自ずとその時の自分に合った会社を、その時々に選んで、そこで働くことになる。一生、ずっと一つの会社で働くことができないのだから。

まさか個人の労働年数が会社の寿命がよりもずっと長くなっているとは…。