オリンピック開催の地、パリでは自転車が颯爽と走っているけれど...
自転車
【2008年6月記載】
単身赴任が決まって、すぐに思った。ワンルームマンションからは自転車で通勤しようと。
とにかく自転車に乗りたかった。私たちの世代にとって、小学校から中学に上がる時、自転車を買ってもらうというのはひとつの流行であって、自転車こそが宝であった。そういった幼い頃の体験があり、“自転車”には特別の思いがあった。
自転車は行動範囲を広げる。時間を有効に利用できる。自動車とは違って、体を使うので健康的で、エコロジーだ。せっかく今までとは違う地域で働くのだから、その中で自分の世界を広げたい。自転車はある意味、私に翼を与えてくれたようなものだ。
子どもの使わなくなった自転車を持ってきた。6段変速がついているので、坂道でも立ち漕ぎをしなくても済む。ワンルームマンションから会社までは片道およそ2km。往路は上り坂なので、およそ20分かかる。逆に復路は下っているので、速い。15分で着く。半年近くも経つと、どの道が走りやすいか、どのコースをとれば速く着くか、どこが一番危険なのか、どこの景色がいいか、いろいろと分かってくる。
往路は上り坂で体力的につらい面はあるけれど、概ね、田舎道なので、ゆっくりと季節の移り変わりや朝の空気を味わいながら走る。復路は夜走る。ほとんどが21時過ぎで、当然のことながらあたりは真っ暗だ。時々、近くにある大学の学生たちが私を追い抜いていく。どうも夜は視界が悪くていけない。特に歩道はデコボコだらけ。スウーッと真っ直ぐな場所はほとんどない。朝の記憶を辿って地面を凝視しながら走らないと危なっかしくてしようがない。もちろん車道は怖くて走れない。自動車はあれだけスムースに走れるのに、歩道ときたら自転車には甚だ走り難い。日本の道は、どれだけ自動車を優遇しているのかがよく分かる。大学生の乗る自転車が増えたせいなのか、最近では一部に、自転車専用道路ができてはいるが、それでも焼け石に水状態で、自転車にとっていい環境とは言えない。
ここで、ふと考え込んでしまった。
今まで、自転車は車道の路肩を走るか、もしくは歩道を走ればいいと思い込んでいたのだが、果たしてそれでいいのだろうか。車道は自動車を優先し過ぎて危ないし、歩道を走るとしたら、あまりにも条件が悪すぎる。自転車専用道路が無い時、自転車は一体どこを走ればいいのだろうか。
道路交通法上、自転車は軽車両と位置づけられていて、歩道と車道の区別のあるところは車道通行が原則のようだ。したがって、歩道を走るのは例外となっている。これを犯せば、罰則として3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金を喰らう。もちろん飲酒運転は禁止で、罰則は5年以下の懲役または100万円以下の罰金となっている。
現実問題として、そういう罰則が科されたという話はあまり聞いたことがないので、行政としても、法律で規制していること現実できることとの齟齬は認識しているのだろう。
警察庁の調べによると、自転車の事故件数はここ10年で1.2~1.3倍に増加しており、その中でも対歩行者や自転車単独での事故件数は4~5倍という高い値になっている。やはり自転車を取り囲む環境は著しく悪い、もしくは悪くなっていると言わざるを得ない。
環境問題がクローズアップされている今。自動車中心の社会インフラを変えていく必要に迫られてきているのは確かであり、自転車をはじめ、単車や鉄道といった環境負荷の低い交通機関を整備、充実させていくことは不可欠である。
私たちは、もっともっと自転車にやさしい社会をめざして行くべきなのだろう。