アッという間に、現金は使わなくなってしまった。4年前は、私のような昭和世代では考えられなかった...
九州から東京へ
【2020年3月記載】
新型コロナウィルスの影響で、京都から東京へ向かう新幹線は信じられないくらいにガラガラで、私の前後左右の席に乗客はいない。とても快適であった。ただし、室内の換気を強めにしているせいで、足元が寒いのを除けば。
長男がこの4月より九州の病院から東京の病院へ異動する。今度の病院はがんや感染症の病院と言うことで、彼がめざしている専門分野を極めるために必要と考えている職場であり、彼の望む仕事や勉強ができるのだろう。
しかし、このために、九州から東京へ引越ししなくてはならない。本来ならこの3月は引越しシーズンでとてもあわただしい時期であり、相当の準備と手間がかかる。新居は半年前から探していたし、早めに決めたので、相応のところが見つかった。それでも引越しはやはり面倒である。彼は独り身だけれど、結構持ち物は多く、また彼自身引越しに割ける時間はほとんどないことは分かっているので、私たちがサポートしなければならなかった。彼も私たちを頼りにしているのは分かっていたし、彼自身は3月30日まで九州の病院で働き、4月1日からは新しい職場での勤務となる。それに合わせて家具や荷物を運んで整理しなくてはならない。
荷出しは3月6日で、荷受けは3月11日に決まった。したがって3月6日から3月末まで、彼はホテル住まいになる。荷出し、荷受け共に彼は立ち会うけれど、やはりサポートが要る。荷出しは、3月4日から妻が九州に行って、荷物の整理、ガス電気等の解約手続きや引越し業者とのやり取りを手伝うことになった。一方、荷受けは、3月11日に長男自身がするのだけれど、彼も新しい病院に異動する手続きがあり、一人では対応ができないおそれが生じるということで、この日は私が休みを取って千駄木にある新しい住居に手伝いに行くことになった。
ということで、3月11日は、朝7時過ぎの新幹線に乗って東京まで行ったのだった。長男との待ち合わせ時刻の10時よりは少し前にマンションに着くことができた。私が到着するとしばらくして、前泊していた長男が不動産屋から鍵を受け取って到着した。久しぶりに会うことができて、とてもうれしい。
引越しは、引越し業者3人が、家具やダンボールに入った荷物を手際よく運んでくれて、とても慣れているのだろうベッドや電動ソファなどは組立図無しでチャチャッと組み立てるし、役割分担も決まっているので無駄な動きがない。2時間もかからないで済んだ。それからあとは、ガス電気の業者、洗濯機設置業者、ウォータークーラー屋が次から次へと来ては、自分たちの役割を終えて帰って行った。引越しに携わる業種の人たちの手際のよさにはあらためて感心した。
ところで、この時、洗濯機設置業者が設置と同時に、給水ホース、排水ホースや振動防止材などの売り込みをしてきた。ノルマがあるのだろう、割高で素直には同意しかねるものだったけれど、水漏れリスクは高いので給水ホースだけは交換することにした。金額は4,400円。この時、引越し業者には引越し代金の40万円をキャッシュで支払った長男であったが、なんとそれ以外には現金の手持ちがないという。
「現金を持っていないの」
と聞くと、普段は持ち歩かないという。
「現金がないと困るんじゃないの」
と再び問うと、別に不便さは感じないという。いつもカードで支払っているので現金を使う必要性がないということらしい。彼はそれでいいのかもしれないけれど、私の場合は現金がないと不安でしようがない。特に、こんないつもと違う場所で、いつもとは違う作業をしている場合には。
結局、洗濯機給水ホースの支払いは私がしたのだが、彼はこれからタクシーに乗って新しい病院へ行くという。勤務するための形式上の面接を受けるために。少し不安に思ったので、現金を渡そうとしたのだが、要らないという。カードで支払うから必要ないらしい。たった今の今、現金がなくて困ったところなのに、それでも現金は必要ないという。
彼の感覚が現代人なのだろう。やがて現金は無くなってしまうのか。