やっぱり昭和が身に染み付いているんだなぁ...

サービスランチ

【2016年9月記載】

人材派遣業に就いて1年と3ヶ月。もうずいぶんと慣れてきて、だいたいの勘所、事業のポイントは抑えられるようになってきた。業績も昨年に続いて右肩上がりの成長性著しい状態を維持しており、周囲の評価も良い。技術職から営業職へ、我ながら見事な転身である。

営業と言っても、相手先は100%P社であり、それほど外回りをすることはない。出張も草津のAP社に行く以外は、大阪にある本社事務所に会議で訪れる程度で、週に2回くらい。それも終日ではなく半日程度の軽いもの。だから普段は弁当持参で、草津の事務所内で昼食をとる。営業職にしては外でお金を使うことが少ない。つましい生活を送っているといえる。

そんな中、先日、久しぶりに終日を外で過ごすことになった。大阪守口にあるP社の研究所で当社社員と面談をした後、神戸の西神工業団地にあるこれもまたP社のIHCH工場にて、当社社員の面談とP社技術担当者と商談をするために出かけたのである。守口から神戸に向かう途中で昼食をとることになるのだが、どうしても利便性の良い梅田界隈になることは必然で、そのとおりの流れで地下鉄東梅田駅から阪急梅田駅に向かい、その移動中の地下街で手ごろなお店を見つけた。

サービスランチが590円とある。安い、それに魚、お浸し、味噌汁とご飯の軽めの内容で、私の好みにぴったりだ。12時にはまだ間があるので空いている。迷わず入った。カウンターに席をとり、ゆっくり食事をとることができた。店内はうす暗く、おしゃれとは程遠い、おそらく夜は居酒屋と化すであろう雰囲気の中、BGMが流れている。

「さぁちこ~、思い通りに、さぁちこ~、生きてごらん~」
「幸せを話したら5分あれば足りる~、不幸せを話したら一晩でも足りない~」

一気に20代の頃の感覚があふれ出て来て、昭和の世界に入り込んでしまった。次から次へと昭和の歌謡曲が流れ出てきて、結局、店を出るまで私は昭和の中に浸ってしまうことになった。少し、今の流行に遅れた古めかしく暗い雰囲気が、私に親近感を与えたのであろう。何となく、抵抗感や違和感を抱くこともなく、すなわち結果的には昭和のにおいに引き寄せられて、この店に入ったことになる。

自分では、サービスランチというメニューの内容や価格で、選んで入ったと思ったけれど、実はその店の与えるにおいにつられて入ったのかもしれない。もし私ひとりではなく、他に誰か連れがいたら、この店には入らなかった。もっとおしゃれな、もっと明るい、もっと活気のあるお店を選んでいただろう。価格だけだったらマクドナルドや立ち食いソバなどもっと他にもたくさん安い店はある。ひとりだと自分の心とからだに一番フィットする場所を、何の遠慮や気遣いもなく選べる。それがここだった。そして昭和歌謡曲が流れるまさに私の世代のお店だった。

自分では今の流行や若い人たちの好みに合わせて、ある程度順応していると思っているけれど、根っこのところでは昭和をしっかり抱えて生きている普通のおじさんなのだ。

ゆっくり休んだあと、おあいそをした。少しばかり疲れが取れて足取りも軽くなったような気がして、次の西神工業団地へ向かった。