もう20年も経つけれど、特急料金はほとんど値上がりしていない。でも、庶民には関係のない話なのかも...
近鉄特急
【2004年7月記載】
「いつも特急に乗っておられるんですよね。リッチですね」
時々会社の同僚からそう言われて羨ましがられる。
関西の私鉄の中では唯一特急料金をとるのが近鉄である。私鉄の中では営業距離が最も長いこともあって、そうした差別化をしないと採算がとれないのであろう。したがって奈良から京都の間、京都から大阪の間といった比較的短い距離でも、乗車券とは別に500円の料金が必要となる。このため特急を利用する人は限られてくる。毎日の通勤に片道500円、往復で1000円の出費は痛い。立ちっぱなしでも快速急行を利用すれば、特急と同じ時間、およそ30分で、大阪や京都には着くので、大抵の人は特急を利用したりはしない。みんな満員電車でくたくたになりながらも我慢して通勤している。
奈良~京都間は観光地を結ぶ線ということもあってか、特急は急行の本数と同じ1時間に4本と多い。しかし奈良~大阪間は乗客のほとんどが通勤客であり、特急は午前中通してもわずかに6本だけである。これでもこの3月より本数が増えて、2倍になったのだが。これに比べて快速急行は29本、急行を合わせると37本で、実に特急の6倍以上にもなる。特急は1車両に68名が乗車でき、10両編成である。いつもほぼ満席であるから、毎日およそ4000人が利用することになる。一方、快速急行の乗車率を200%とおくと、実に特急の12倍の50000人が、毎日辛い思いをしながら、大阪まで通勤していることになる。
こんな状態で本当に仕事ができるのだろうか。元気はつらつと働くことができるのだろうか。とてもできるものではないだろう。通勤に1時間以上をかけて、やっとのことで辿り着いて、効率的、効果的な仕事ができるはずがない。しかし、みんな頑張っている。一所懸命働いている。私には、通勤にめげずに頑張って働く自信はない。病気もいろいろしてきたし、おそらく人並みの体力はない。片道500円を支払って特急に乗る。楽をしている4000人のうちの1人なのである。ある意味では、この高い?特急料金のお陰で助けられていると言えよう。けれど多くの人々は我慢している。この500円が払えないから、しんどい思いをして通勤し、一日懸命に働いて、夜遅くに帰宅する。さらには高い税金を払って、つましい生活に満足しなければならない。こんなひどい話はない。
どうして働く人々の立場になって、物事を考えないんだろう。もっと列車の本数を多くしよう。高速道路ばかりつくって、輸送効率の悪い自動車をどんどん走らせ、地球環境を破壊するよりも、大量輸送のできる鉄道を充実させていく方が、ずっとみんなのためになるのに。巷で議論されているように、一極集中はやめて、もっと地方に機能を分散させよう。そうすれば地方の活性化にも繋がるし、何よりもみんながもっとゆとりを持って働けるはずだ。どうして、働く人の気持ちや働く人の状態がわからないのだろう。