これからの季節、熱中症には気をつけたいですね。エアコンは基本機能のみの機種を選びましょう!
お掃除機能付きエアコン
【2024年6月記載】
妻の妹さんから相談が入った。これから夏にかけて、エアコンのクリーニングをしたいのだけれど、業者から提示された費用見積もりが36,000円だという。これは高すぎるのではないかというのだ。私もエアコンのクリーニング代は1万円前後だと思っていたので、その業者と作業内容を聞いてみた。
彼女の家では近所の家電販売店を使っており、裕福なこともあり日頃から最上級の製品や機種を勧められていて、その流れで必要以上の作業が付加されているのではないかと考えてはみたのだが、それなりの理由があったのである。
今回対象のエアコンは、お掃除機能付きのエアコンで、一時期ロボットエアコンと呼ばれ持て囃されていたものであり、この仕様のエアコンのクリーニングは壁に取り付けたままでは作業ができないので、一度取り外してお店に持ち帰っての作業となるそうである。そのために費用がかさむという。エアコンの取り外しは、冷媒漏れ等のリスクもありとても厄介な工程である。できれば避けたい。なぜ、そこまでしなくてはいけないのか。
そういえば、数年前、我が家でもエアコンのクリーニングをしてもらったことがある。その時は、妻に任せていたので、私自身はその作業を見てはいなかったのだが、彼女の話によると、
お掃除機能付きの壁掛けエアコンとその機能がない普通の壁掛けエアコンの2台をクリーニングしてもらい、料金はお掃除機能付きエアコン20,000円、普通のエアコン10,000円くらいで、普通エアコンの掃除は1時間程度で済んだのだけれど、お掃除機能付きエアコンはとても作業が難しそうで、午前中だけでは終わらずに3時間程度かかった…ということであった。
お掃除機能付きエアコンのクリーニングは、掃除機能の機構が付いているので、とても手間がかかり、その分価格は高くなるようである。
そもそもエアコンのお掃除機能とは何なのか、お掃除機能がついているのにクリーニングが必要とは…? 一体どういうことなのだろうか。
掃除機能とは、エアコンのフィルターに付着した塵や埃を除去するものであり、エアコンの内部(熱交換器など)のカビや臭いを防止するものではないし、そこに付着した埃は除去できずに汚れが溜まってしまう。また内部構造が複雑になるため、かえって内部は埃が溜まりやすくカビや臭いも付きやすくなる。(何のための機能なのだろうか?)
したがって、お掃除機能付きは構成が複雑になり、一度分解しないときれいにはクリーニングできない。そして、メーカー毎に分解方法が異なるため、対応できるとしても時間がかかる。だから室内機を一度外して持ち帰り、クリーニングするというのは頷ける。費用が高くなるのも致し方ない。
ところで、フィルターの埃をきれいにするのは簡単である。何もお掃除機能が付いていなくてもほとんど不自由は感じないはずである。エアコンの前扉を開けてフィルターを取り外し、掃除機で吸い取ればいいのだから…。その作業時間は5分もあれば十分である。しかし、それだけの為にとても高価な商品にして、消費者に提供するとは…。その挙句に、メンテナンスが困難なものにしてしまっているのだから。何と言っていいのか…。
今になって感じるのだけれど、この責任は私が勤めていた会社にある。反省するにはあまりにも遅すぎるのだが…。
当時、トップの方針により、とにかく売れる商品(感動商品)をつくれと言うことで、商品の付加価値づくりが盛んにおこなわれていた。ユーザーに訴求できる特長づくりをめざして、私たちはアイデアを絞りに絞っていた。そんな中で、この商品は生み出された。
その時、フィルター掃除をするロボットを搭載したエアコンと銘打ったこの商品に、私は「やられた!」と思った。フィルター掃除ごときで高い付加価値が付き、大ヒット商品になったのだから、商品開発者としての私には思うこと(自分の感性の無さに対して)がたくさんあった。しかしその後続けざまに、今度は酸素エアコンと称して、酸素富化膜を搭載したエアコンが商品化されたのには驚いた。本当にトップはユーザーに対する商品の性能や価値というものを分かっているのかと…。
この酸素エアコンはまさに眉唾物で、空気中の酸素濃度を20%から30%に濃縮しエアコン吹き出し口から出すというのだが、吹き出し量が限定されるので、室内の酸素濃度はほとんど増えることはないし、ましてや室内にいる人が吸える酸素量はほとんど変わらない。さすがにこれは売れなかったのだが…。
お掃除機能付きエアコンにしても、酸素エアコンにしても、その言葉のイメージでユーザーにありもしない価値を勝手に思い込ませている面があり、いくら売れる商品と言っても、これではウソをついていることになりかねない。お掃除機能付きエアコンは、フィルターについた埃を取るだけでなく、エアコンの掃除自体が不要だと思わせかねないし、酸素エアコンは室内の酸素濃度をリッチにして高濃度の酸素を吸えるものと思ってしまう。
今から思えば、やはり間違いであった。コンセプトもユーザーに訴求できる商品(感動商品)ではなく、役に立つ商品であるべきであった。
妻が言った。
「これからは、お掃除機能付きエアコンは絶対に買わないわ。それに、高機能付きの家電はやめて、できるだけ基本機能だけのシンプルな家電にしよう」