いつまでも働け、働けとか、効率化云々を言っている企業や政府は如何なものか

10連休

【2019年5月記載】

天皇陛下のご退位および皇太子殿下のご即位に伴い、4月27日から5月6日までが10連休となった。個人的には今までも10連休は何度となく経験していた。前に勤めていた会社は、年末年始、お盆休暇やGWには有給休暇取得の推進もあり、大型連休とすることが多かったので、それほど珍しいことではなかった。しかし、今回は日本中が暦の上で10連休となる。公務員や大企業(特に製造業、金融業など)に勤めている人たちはもちろん中小の企業でも休みだろうし、学校も休みだからほとんどの人たちが休みとなる。ただし、サービス業、医療介護に携わる人たちには10連休は難しいだろうけれど。

これだけ日本国中が休みとなることは過去にはなかった。どんな歪が生じるのか、多少の不安はあったけれど、この大型連休、特に大きな問題や混乱もなく終えようとしている。平成から令和へ、なにごともなく平穏につつがなくバトンが渡されたという感じで、いい10連休であったと思う。日本として、国として、社会のシステムとして、みんなが休むとなれば、それに従ってくらしは形づくられていく。この10日間は休日なのだから、働かない、仕事はしない。自分たちの時間として、思い思いに好きに使うことができる。10日間働かなかったことをとやかく言う人もいないし、後ろめたい気持ちになることもない。なにしろそれが当然であり、みんながそうなのだから。10日間休んだ後、急に仕事をするというOFFからONへの切り替えに戸惑うことはあるだろうけれど、みんながそうなのだから、それも受け入れられる。

10連休になって何か困る事ってあるのか。この間、製造業を中心に生産性が落ちることは否めない。多くの国民が働かないのだから。でも一方で、サービス業を中心とした消費は増えるのだから、そうとばかりは言えない。10連休で労働時間が減少した分、生産量は減少する。これは日数的に、時間的に、年間で1~2%の減少となる。しかしこれが即、生産性が低下することに繋がるわけではない。休むことは、リフレッシュ効果や勤労意欲の向上にもひと役かうかもしれない。

先に述べたように、サービス分野での消費拡大もあり、10連休がそのまま生産性の低下に繋がるとは考えられない。むしろ10連休になっても、それを受け入れられるだけの柔軟性が社会システムにあると考えた方が良い。人々が働けば働くための、人々が休めば休むための、社会としてのシステムが機能する。

月曜日から金曜日までは平日として、多くの人は働き、土曜日と日曜日は休日として、多くの人は休む。これは今の社会の取り決めである。だから、土曜日や日曜日に役所が開いていなくても、銀行が閉まっていても、誰も文句は言わない。平日の朝、みんなが一斉に働きに出かけ、通勤ラッシュとなっても誰もが我慢して会社に通っている。それが当たり前だから。それでも、もっと昔は、そう松下電器が週休2日制を導入するまでは、土曜日は半日出勤だった。当時は今ほどには通勤時間なんてものがそれほどかからなかったこともあり、半日出勤は普通だった。今では週休2日が常識となっているけれど。

ところで、効率化とか生産性向上とか、無駄をなくすとか、今の世の中では、そういうことで売上を伸ばしたり、利益を上げたりして、あたかもそれがとても素晴らしいことであるかのように受け止められている。経営者ならそういう事をしないといけないし、働く方もそれに向けて努力しなければならない。しかし、効率化ということで、なんだかそれがよりレベルの高いしくみやスキルを要するもので、それができないといけない、効率化を求めることは善であり、それをしないことは良くないことであるといった空気が世の中にはある。

確かに、不必要なものを省き、生産性を上げることは、自由な時間を増やし、エネルギーや物質の消費を抑え、私たちのくらしを豊かにしてくれそうだ。しかし、それを追求するあまり、かえって時間に追われ、心のゆとりがなくなってしまっているのではなかろうか。

今のコンビニが置かれている状況はそのいい例ではなかろうか。いつでも利用できて、どこに行っても必ずあるコンビニエンスストア。24時間オープンしていて、日用品、食料品、ATM等なんでも揃う。でも、コンビニって本当に必要なものなのだろうか。24時間オープンしているのだから、いつ行っても利用できる。夜遅くに行っても、朝早くから出かけても大丈夫だし、ひと通りのものならなんでも揃う。

コンビニ本社にとっても規模の拡大と効率化を追求すると24時間営業となるのだろうけれど、この24時間営業というのがひとつの課題ではないだろうか。24時間営業するということは、24時間活動するということであり、それを社会が必要としているということである。社会のしくみが24時間活動するようになっていると考えてもいい。24時間働く人がいるということであり、全国のコンビニがそれをしているということは、日本中の人々が24時間働いているということである。だから、真夜中にコンビニが開いていてとても便利で助かるということになる。ひねくれた見方で言えば、コンビニが24時間開いているため、みんなが24時間働かなくてはならなくなってしまった。そういう社会のしくみが出来上がってしまった。

10連休ではないけれど、みんなが夜働かなければ、活動しなければ、コンビニだって開けておく必要はないし、仮に開けていたとしても誰も来ない。普通の生活をしていれば、夜の8時以降、朝の7時くらいまでは、コンビニを利用することはない。急に必要なものがあったとしても、ご近所付き合いが少しでもあれば、今の世の中そんなに困ることはない。

今のくらしで、特に大都会で、人々が人とのつながりを持たずに、一人で生きるようになったことと、社会のしくみが24時間活動できるようになったことが、豊かになった割には今ひとつ生きにくさを感じる一番の原因ではないだろうか。本当は、みんなもっとゆっくり時間を使いたいと思っているはずなのに。いつまでも働け、働けとか、効率化云々を言っている企業や政府は如何なものか。