あれから10年が経ったけれど、自販機の事業は確実に進化していて、日本企業の底力を感じる

自動販売機とコンビニエンスストア

【2014年11月記載】

単身赴任で住んでいるマンションから会社までのおよそ2kmを、毎日片道30分をかけて歩いている。その途中にあるレストラン兼遊戯施設が2ヶ月前に閉鎖され、その跡地にコンビニエンスストア(ローソン)ができた。国道一号線沿いの大きな交差点に位置し、広い駐車場があるのでとても便利そうである。これで私がマンションを出て会社に到着するまでの間に、コンビニが5店できたことになる。ファミリーマート、セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート、セブンイレブンの5店。私の勤務する会社やマンモス大学があるからとはいえ、とても多い。これが24時間オープンしているのだから、とても便利で何ひとつ不自由しない。とは言っても、私の場合は、最近ほとんど利用することはない。月に1、2回ほど会社の帰りに立ち寄って、切らしてしまった食パンを買う程度で、それほど活用しているわけではない。毎週末に自宅から必要なものは単身赴任先に持ってきているので、それで事足りている。

それはさておき、このコンビニが増えて便利になる一方で、そのしわ寄せを食っているのが自動販売機。ここ5、6年で普及台数および販売金額が伸び悩み、減少傾向に転じている。コンビニがこの10年間で、1万店増えて5万店にまでなっているのとは対照的だ。自動販売機とコンビニエンスストアを比べたらすぐに分かるように、品数と鮮度で圧倒的にコンビニが優っている。当然の結果である。

ところで、先般、大手飲料会社のK社の副社長以下3名の方が、当部門を訪ねてこられた。K社の新商品である家庭用ウォーターサーバーの販路開拓のため、当社の持つ販売網を活用したいとのことで。要は、流通改革をめざし、ダイレクト販売をしたいようだ。しかし、当社のショップ店も販売力という点では、一昔のような力はなく、またK社といった特定の企業にために活用できるようなスキームでもない。この話はここで止まった。

ところが、話題が当社のスマート家電に移ると、俄然話が盛り上がってきた。ウォーターサーバーがネットワーク化されることによるメリットがとても魅力的に見えたのだ。ウォーターサーバーとスマートフォン、さらには家電との連携で、何か新しいことができそうだ。さらに話は進んで、K社が保有する自動販売機をネットワーク化できれば、とてもよい商品になるのではないかと…。

ひと通りの討議が終了し、今後の両社の協力関係と進め方について話がまとまった後、K社の副社長と雑談を交わしたのだが、彼が言うには、

「コンビニがここまで伸びて、一方で自販機が低迷していることに反省をしなくてはいけない。この10年間の努力の違いが如実に現れた。コンビニがユーザーの要求を捉え、変化していったのに対して、自販機は全く何の手立ても打たなかった。何も変わっていない。その差が出てきた。このままでは自販機は消滅してしまう」

「そうですね。コンビニは24時間営業で、自販機と一緒ですね。しかし、本当にこれでよいのでしょうか。なるほど便利かも知れないけれど、24時間もオープンしておく必要がどれだけあるというのでしょうか。欧州なんて、休日はお店も閉まったままですが、それで何不自由なく暮らしているのですから」

「同感です。欧州では店は閉まっていても、彼らは豊かな生活をしています。7~11程度ならまだ分かるんですが、24時間オープンはおかしい。年末年始も休日なしで、いきなり元日から営業しているお店も多い。これでは正月も何もあったものではありません」

「非日常的なことがなくなり、年がら年中いつも変わらない。これでは文化は育ちませんね」

確かに、今はコンビニ盛隆の時代だ。けれどいつまでこんな状況が続くのだろうか。おかしいと感じるものは、どこかに歪みがあるはずで、“余計な便利さ”を採った反動がどこかに現れてくるに違いない。

今のこの時期に、次のコンビニや自販機を考えるとよい事業アイデアが出てくるに違いない。