「私は現場を知っている」と、簡単には言えないよね。実感として...

大根抜き

【2013年4月記載】

新規事業のネタは農業にありそうだ。そう思ったのは去年の春ごろから。それが、新規事業のネタとして農業にアプローチしなければならないと、より深く考えるようになったのが去年の秋ごろから。そう、次男の就職先がアグリビジネス関連に決まってから。

農業の生産性が低いことは、なんとなく感覚的に分かっていた。それが、去年の暮れから今年の始めにかけて農水省の方々との意見交換によって、より深くその課題を理解することができた。しかもTPP対応としての農水省のスタンスが「攻めの農業」に転じるとのことで、農業への私たちのお役立ちもあるのではないかと何か確信めいたものも湧いてきた。

そんな状況下で、とにかく新しいネタを探す作業をしなくてはならない。まずは、実際に農家の立場になって、その困り事を把握することから始めよう。ということで、近隣のJAに頼んで、近くの農家にお世話になることとなった。私たちに協力して頂くのはNさんという農家で、田圃が一町七反、野菜ハウスが六反あり、これらを家族四人(夫婦と祖父母)で耕作しているという。

2月4日、早朝よりビニールハウスでのミズナ収穫に立ち会った。JAの職員さんと待ち合わせて、朝の6時にビニールハウスへ赴いた。あたりはまだ暗く、すごく寒い。Nさんのビニールハウスに着いて、暫くその作業の様子を見学した後、私たちもそれを手伝うことにした。作業自体はそんなにハードではなかったが、ビニールハウスの中ではあっても寒いので、2時間も作業をしているとさすがに堪えた。これを機にしばらくの間、およそ2週間にわたって、体調を崩してしまった。

3月15日、少し暖かくなって、農作業をするのには最適とも思える気候となった。この日は、Nさんから予てより要望のあった「大根抜き」の作業をする日であり、総勢6人もの開発メンバーが集まった。大根抜きの作業はきついと、あらかじめ聞いてはいたけれど、これほどきついとは思ってもいなかった。まず、大根が握れない。太くて、私の手を広げても大根の半周を掴むのがやっと。10本も抜くと、握力が無くなってくるのが分かる。正味、1時間も作業をしただろうか。この日は1日中手がだるくて、ペンが持てなくなってしまった。当然のことながら、無理やりペンを持っても字は全く書けない。字にならないのである。後遺症はまだ続いた。1日で握力は戻ったのだが、2、3日もすると、今度は体の節々が痛み出して、堪らなくなってきた。自由に動けない。

毎日こんな作業が続くのである。現場に出て、直接体験することにより、農家のお困り事を掴むという考えは正しい。しかし、一朝一夕で課題を発見するのは難しいし、しかもその作業はきつい。自らの考えを行動に移すことは評価したい。が、成果に結び付けるのは並大抵のことではなさそうだ。今、まさに、私たちはそのことに取り組んでいる。