「現代人は若い」って、本当なの?

日本老年学会

【2017年1月記載】

お正月早々、とても違和感を覚えるニュースが入ってきた。高齢者の定義を変えるというのである。最近のお年寄りは、昔に比べて体力や知力が向上して5~10歳ほど若返っており、今まで高齢者と定義していた65歳以上では実状に合わなくなっているという。まだまだ高齢者として呼ぶには早い人が多いらしい。

日本老年学会は、今の世の中、健康で活力のある人が多くなっているので、65~74歳は准高齢者と定義し直して、この世代にはもっと仕事やボランティアなどの社会活動に参加していくようにとの提言をしたのである。

高齢者の定義は、世界保健機関(WHO)によって65歳以上となっている。日本の場合、平均寿命は男性で81歳、女性で87歳であり、いわゆる元気でいられる健康寿命はそれぞれ71歳、74歳である。この定義に従うと、高齢者となり社会の第一線から退いて、残りの人生を楽しむ期間は男性で6年間、女性で9年間。あとの10年くらいは、何らかの介護支援を受けて、細々と生きていくということになる。

ところが、この新しい高齢者の定義に従えば、男性も女性も病気を押して75歳まで働き、人生を楽しむこと無く、この世を去ることになる。少し実態にそぐわないのではなかろうか。無理やり75歳にまで引き延ばしているように感じる。“5~10歳若返っている”というのであれば、せめて高齢者の定義は70歳からとすべきであり、体力や健康面でのデータ的裏づけを得ての話であれば、男性と女性が同じというのもおかしい。もっというなら、人によって違うはずであり、職業、地域や生活様式によっても差は出る。

学会の有識者が決めるのであれば、もっと慎重に、理論的根拠を持って定義して欲しい。少なくともこのような誰でも思いつく疑問が出ないようにしてもらいたい。どうも、政府の抱える年金や雇用問題に対応するために、社会保障制度の改正に向けて、大衆の意識操作をしているように思えてならない。学者もいいように操られているのだろうか。

はっきりしていることは、75歳までは労働人口としてカウントする世の中が始まろうとしているのであり、これをどう考えるかが重要なのかもしれない。

75歳までは正規雇用で働けて、福祉制度も継続できて、ボーナスも支給される。サラリーマン生活が15年長くなり、50年勤続も普通になるということである。住宅ローンも長くなり、耐久消費財の保証期間も長くなりそうだ。

50年間も同じ会社で働くなんてありえるのだろうか。それだと変化に乏しいつまらない人生になりそうだ。いくら働けるからと言って、20代と60代が同じ仕事をするわけにはいかないだろうから、自ずとライフステージ、サラリーマン生活でのステージが区分けされていくような気もする。修・破・離ではないけれど、学習ステージ、活用ステージ、新規展開ステージといったように。もし、そうであれば、60から75歳はそれまでの経験を活かして、チャレンジするステージになってもいいだろう。60歳になってからでも、堂々と胸を張って、未来を語り、行動していってもおかしくない。子育てを終えて、ある程度の蓄えもある世代だから、チャレンジすることのリスクは小さい。ひょっとして、60代の起業家やイノベーターがどんどん出てくる世の中が始まるかもしれない。